ほしのいえ緑再生プロジェクト(仮称)2

つむじかぜ186号より


「また、逃げても、同じこと。何とか、今の場所に留まることを考えたい。井戸を堀り、木を植えて風を防ぎ、草原を柵で囲って草を食い尽くさないよう家畜の頭数を管理し緑を再生したい」MONGOL KAZE TRAVEL(MKT)の社長ハグワは、今年の1月に来日したときにそう言っていました。この、草原を管理牧場化するという大胆な発想に非常に驚きましたが、私たちは、それに賛同しました。

ほしのいえは、以前、アルタンボラクという場所にゲルを張っていましたが、その周辺の草原が荒れたので今の場所に移動しました。今回も、北に移動するという方法がありますが、結局同じことです。また、ハグワの中には、地球温暖化云々の前に、無自覚に繰り返される人為的な要因への強い怒りがありました。確かに、草原は、雨が少なくて荒れてきています。しかし、それに追い討ちをかけているのは人間なのです。

家畜が増えすぎた上に、カシミヤのために根まで草を食べてしまう山羊が爆発的に増えたのです。遊牧民は、これを知っていて、かつては、山羊は、全家畜の1/5ぐらいに留めてきたのに、現在は、家畜の半分ほどまで増えてしまったのです。

昨年、雨が少なかったので、南の地域の遊牧民が草を求めて北上し、ほしのいえの周りの一部の草をすっかり食べつくしてしまいました。草原は、草がある程度残った状態で冬を迎えないと、翌年に向けて、土の中の保湿が保てません。食べつくされて土がすっかりはだけた場所は、冷たい乾燥した風に吹きっ晒されて水分を奪われ、土から砂へ変わっていってしまうのです。更に、この冬は、雪が少なかったのでその進行を速めました。

もはや、管理牧場化するしか、荒れた草原を再生させることはできないでしょう。もちろん、カラコルムや北のほうの草原は、今でも綺麗に広がっています。しかし、確実に、砂漠化は北上しています。モンゴル人は、「自然は、良いときもあれば悪いときもある」と如何にも遊牧民らしい考え方で平然としています。彼らは、長年そうして生きてきたわけですから仕方ないことだとは思いますが、今、手を打たないと間に合いません。

私たちの、ほしのいえ緑再生プロジェクト(仮称)が、それに気づくきっかけとなればと思います。

つづく

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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