ものづくり職人

つむじかぜ226号より


インドのタタ自動車が、超低価格車「ナノ」を発表した。一台日本円で20万円程度と極端な安さだ。ドアミラーもなくしてしまうというからやることが大胆だ。日本ら、車検を通らないかもしれないが、アジア中で「ナノ」が走るようになるに違いない。

日本のメーカーでも、クオリティーを落として価格を下げてアジアでの販売を拡大しようという動きが出てきた。ファスナーで有名な某社は可能開閉回数を半分に落として低価格販売を始めた。

とにかく、日本製品のクオリティーの高さは定評があるが、too muchだという批判もある。そんなに高い品質は、誰も求めていないという訳だ。だから、多少は品質を落としても安さを重視する市場も、アジアやアフリカには数多くあるということだ。アメリカ経済を頼りに、値段は高いが、品質がよければ売れるというマーケットだけでを相手にするわけには行かない。その市場で受け入れられる価格を実現することも販売戦略の重要な部分である。

日本のものづくりは、今まで品質を上げることを当然と考えてきたし、それがものづくりの目的であり楽しさでもあった。これからは、それと全く逆のことをしなければならない場合も増えそうだ。これはなかなか納得しがたいものがある。しかし、ものづくりの職人たちは材料の質が落ちても、きっとその条件の中で、最大限いいものを作りたいと思うに違いない。それがなくなったら、職人の魂が失われてしまうだろう。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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