*つむじかぜ236号より
モロッコといえばメディナ。アラビア語で都市を意味するこの言葉は、マグレブでは旧市街地という意味だ。フェズとマラケシュのメディナはとても有名だが、モロッコの都市なら大抵は、規模の大小は別としてメディナがある。ところで、メディナはなぜ、あれほどまでに迷路になっているのだろうか。その原型は、カスバなどにあり、敵から身を守るために迷路にしたとも言われている。
しかし、坂道の多いフェズと違ってマラケシュは、広々とした平地にあるから何もあんなに密集する必要は無いようにさえ思うが、城壁を作り、人々が密集することで危険から身を守るそんな知恵が、そこにはあったように思う。怖くなると、身を寄せるのは万国共通だ。
しかし、どうやったらあのような迷路になるのだろうか。袋小路もいっぱいあって、もう滅茶苦茶としか一見思えない。設計者はいたのか。長老が導いたのか。無秩序に、ただただ継ぎ足していったように思えてしまう。しかし、エッサウィラという南部の海岸線の街のメディナは、碁盤の目のようになっているところもあって、ますます不可思議だ。
パリやローマは、国家が計画した街だが、メディナは、庶民の知恵でできた街だと言われる。私たちには分からないが、中庭のある家の形式や、ハンマムや公衆便所の配置など様々な決まりごとのあるパーツが寄り集まってできている計画された都市だという説もある。
思うに、計画の概念が正反対のようだ。全体をまず考えないと納得できない合理主義。部分の集合でいいと考える知恵。カオスに見えてカオスではない。アラブやアジアの世界には、むしろその方が心にしっくりくる、そんな感覚があるように思う。
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