9/26(土)に、「風土の旅人たち」と題して、東北芸術工科大学・大学院長で東北文化研究センター所長(※)の赤坂憲雄先生に講演して戴いた。ご参加くださった100名近い方々に、90分間じっくりと先生のお話を堪能していただけたと思う。
先生は、「定住」に対する概念として「遊動」を提唱されている。そして、縄文以来、定住という概念が普遍化されてきたが、近年これが崩れ、遊動が始まり、人は、円の中心で生きるのではなく、楕円、もっと言えば、3点以上の拠点を持ちながら生きていく。「故郷はありますか?」と問われて、明確に答えられる人は少なくなって来ている。と指摘されている。
先生は、それを嘆いているわけではない。むしろ、定住の概念から、異邦人を排除していくような世界は崩れ、むしろ、異邦人、即ち風土の旅人が文化を作っていくんだ。そこに未来がある。とおっしゃっている。
その日の夜、弊社スタッフの友人の方々が講演を聴きに来て下さったので宴を共にした。「あの口調は、独特のリズムがあっていいねえ」確かに赤坂先生の講演は、静かな時間の流れの中に一定のリズムがある。少し高い声で、どこか追分節を想起させる。そのリズムが妙に心地よい眠気を誘う。「確かに、リズムがある。だから眠ってたのか」「そんなことないよ。失礼だなあ」現実とは離れた文化的な世界に触れた所為か、皆さん、少し興奮気味である。話は、どんどん発展し政治の話になった。「民主党政権は、ますます、革命的にならざるをえない」「その分析は、凄いね」と、益々話は盛り上がる。
旅作りに一番必要なものは何か。現場を踏査し仕入れの道筋をつけツアーという形にしていく。顧客のニーズは何だ。食だ。値段だ。という議論が盛んに行われる。それ以上は語られない。戦術論だけでは、方向性を見失う。旅とは何か、イザベラバードでも読み返しながらじっくり考えてみようと思う。
※現・学習院大学教授(編集部注)