モロッコから、ラシッドが来ています。とても優しいしゃべり方をする若者、ラシッドこそが、モロッコ支店のリーダーです。先日までは、サラも来ていました。ラシッドとサラは、以前、同じ小学校で先生をしていました。サラは、現在も現役の先生で、2週間の冬休みを利用してやって来たのです。
「サラは、今、お金がないので私が渡航費を払います。でも、サラが将来ガイドの仕事が出来るようになって、お金が出来たら返してくれます。」サラは、先月、日本語ガイドの試験を受け、3月の結果発表を待っているのです。
モロッコでは、日本語ガイドが少なく、多少考え方が違っても目をつぶって雇うしかない、と考えそうですがラシッドは違います。「日本語を話せるだけではダメです。私たちの気持ちを解ってくれる人でないとダメです。だから、今は日本語ができなくても、気持ちがわかる人に、日本語を習ってもらいます。サラもその一人、他にもいます。こうして日本に来て色々なことを経験することが全て勉強です。一番大切なことは、気持ちです。」
モロッコは、現在、ラシッドを含めて6人のガイドがいます。みんなが年間ほぼ同じ仕事量になるように調整しています。アンケートやその仕事ぶりでボーナスを決めるそうですが、「基本的には平等です」とラシッドは、胸に手を当てて言いいます。
そんなラシッドが私に、「スタッフがモロッコから日本に来たら、困っていることはないか、食事はどうか、ホテルはどうか、と聞いてあげてください。日本のスタッフの気持ちが伝われば、モロッコのスタッフは、もっと頑張れます。大切なことは、気持ちです。」なるほど、私たちがモロッコに行ったら、実に細々と心配してくれます。それは、彼らは、仕事ではなく彼らの気持ちだったわけです。
日本人は、「他人の心に立ち入らない」というのが普通です。でも、彼らは全く違います。人の気持ちに立ち入って、いっぱい心配してあれこれ世話をして一緒に生きていこうとします。アジアの人々も、みんな支えあって生きています。日本人の心は、そういう心情から遠くなってしまっているなあ、とつくづく感じました。