「12日、政府の革新的エネルギー・環境戦略の原案が明らかになった。焦点の原子力発電は民主党の提言を踏まえ「2030年代に原発稼働ゼロ」と明記した。代替電源として火力の増強を打ち出し、発電所の新増設のための環境アセスメントの期間をいまの3年から1年に短くする。20年に温暖化ガスを1990年比で25%削減する目標は事実上撤回し、30年で2割削減へと後退させた。」(9/13日本経済新聞朝刊より抜粋)
なんと、これを19日にも閣議決定するという。「原発に依存しない社会の一日も早い実現」を基本方針とし、「1.原発の40年運転制限を厳格運用する 2.原子力規制委員会の安全確認を得た原発だけを再稼動する。3.原発の新設・増設は行わない。」を3原則とする(同紙より)
ただし、「今後も原発は当面は重要電源」、「もんじゅは廃炉にするが、再処理は継続」と矛盾する内容でもある。しかし、本当に実施されるのか。私には、俄かに信じがたい英断と映る。
日経新聞は、同時に、米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長の「日本、原発ゼロ再考を」という寄稿を載せている。その内容は、事故が起きたのは、日本政府が、原発を適切に管理できなかったためであり、強固な規制権限の基盤を作り、安全な操業を確保し国民の信頼を取り戻すべきだ。また、中国が今後100基以上の原発を開発し世界最大の原子力国家になるのに、ここで日本が原発ゼロの方針を採れば、日本は、核拡散防止に必要な世界最高峰の技術基準を失い、今まで果してきた核拡散防止に関する責任を放棄することになる。というものだ。
米国は、現在の野田政権を消費税増税、TTP加盟、原発維持という現実路線を歩む政権として評価してきたが、原発ゼロの方針をとれば、見放されるぞ。とばかりにこの寄稿に絡んで、日経新聞は解説している。
政府が実施した討論型世論調査や意見聴取会で原発ゼロが多かったことが根拠になっているとはいえ、果たして、民主党も、政府も、これを貫けるのだろうか。米国からも厳しく言われば、総理大臣も変わってしまうのが今までの日本の歴史である。足元の経済界からも、原発ゼロなどとんでもない。という声が日に日に激しくなっている。なんとも脆弱な決意のように感じてしまう。まさかとは思うが、選挙対策のリップサービスなのかもしれない、とすら思ってしまう。
「パワフルでモダンな社会を維持するために原発は必要」と前出のジョン・ハムレ所長は書いているが、「パワフルでモダンな社会」とは何だろう。アメリカのような社会ということか?そんな世界をもう日本人は、望んじゃいない。先祖から受け継いできた美しい風土、文化、習慣、生活を、子々孫々に永続可能な状態で残したい。そう考えているのではなかろうか。
何れにしても、今後、この方針が貫かれるのか注目したい。また、マニフェストのように、反故にすることなく、本物の英断として評価されるよう実行を期待したい。