ブータン CBSTプロジェクト

つむじかぜ448号より


9月18日、バンコクでサティシュ(バンコク支店長)と別れて約5時後、ブータンの首都ティンプーに着いた。日本環境教育フォーラム(以下JEEF)がJICAの草の根技術協力事業の枠組みで、ポブジ谷で行っているCommunity-Based Sustainable Tourism(以下CBST)のプロジェクトのお手伝いを、私は一昨年からしている。ようやくホームステイ(以下HS)の受け入れ準備ができ、ローカルガイド(以下LG)のトレーニングが終わり、いよいよ実践の段階に来たので、ポブジ村でプロモーションのアドバイスをして欲しい、というのが今回の私に与えられたミッションである。

翌日は、ポブジ谷でホームステイ(以下、HS)をし、合計6件のHS先を訪問した。掃除の仕方や、ゲストルームのセッティング、料理などの研修を行ったと聞いていたが、どこへ行っても、大変綺麗になっていて驚いた。今回、私がHSをしたお宅も、2年前に訪れたときは、到底HSできるような状態ではなかったが、見違えるほどになっていたので、ブータンの人々の素直さ、まじめさを感じた。

トイレは、プロジェクトで50%の費用負担をして改造、または新設をしている。新設には800ドルほど掛かるから、その半分をHS先が負担していることになる。彼らの期待が一身に私に向けれられているのか、視線が熱い。買ったばかりのマットレスが、ビニールの袋に入ったままになっている。まだゲストは来ていないのだ。

このポブジ谷は、弊社もツアーコースに入れている。オグロヅルが10月~3月にかけて飛来し越冬する場として有名であるが、なんといっても、谷の真ん中に、かなりの幅で平らに広がる湿原が美しい。峠を越えてこの村に入っていくと誰しもが見とれてしまうに違いない。私は、一瞬、モンゴルの奥カラコルムの風景を思い出したほどだ。

谷は奥が深く20kmほど続き、奥の方に進むと、その美しさは更に増す。村の真ん中でその美しさに抱かれているような心地良さがたまらない。ブータンの伝統的な生活、文化、習慣をそのまま残したこの美しい谷でHSをしようというのである。

ブータンのツアーは、ゾン(寺と官公庁舎を兼ねた建物)や博物館を見学するような形式のツアーが多いが、HSそのものを目的にするツアーが、ここ、ポブジ谷ならできる。しかも、LGから村の伝説や生活、習慣などの話が聞ける。周辺のお寺や学校なども訪問できるのだ。

さて、BKT(ブータン・カゼ・ツアーズ&トレックス)のスタッフ達に2年ぶりに会い夕食を共にした。兎に角、ブータンのスタッフは、人見知りでおとなしい。お酒も殆ど飲まないから、こちらからあれこれ聞かないと話が進まない。社長のシンゲは、弊社でブータンへ行かれた方ならご存知とは思うが、48歳になり益々元気である。

昨年は、2011年のブータン国王夫妻の訪日でブームになりお客様も多かったが、今年は、そのブームも去った。相変わらず、日本語ガイド不足は解消されていないが、激しく移り変わる時代の中で、どうやってブータンの素晴らしさを未来に伝えていけるのか。GNHというコンセプトは素晴らしいが、一旦崩れたら失望感も大きいのではと少々心配である。現実に目を向けて、何を残し大切にしていくのか、そんな目が必要だと思う。


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★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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