飯田の観光を考える

つむじかぜ504号より


久しぶりに飯田に帰省した。父が、最近は歩くのもおぼつかず、言葉数もすっかり少なくなってきたので、機会を見つけて顔を見せるようにしている。来年、90歳になる。

今回は、飯田のあるロータリークラブで話をしてくれと高校の同窓生から頼まれた。すっかりよそ者になってしまった私が、今更、何を話すことがあろうかと思ったが、「夜には、何人か集めてあるで、おいなよ」と言うものだから、ならばとのこのこ出かけていった。

リニアの話にも触れてくれというので、あれこれ調べてみた。しかし、飯田市としては、まだ何も具体的な計画はないらしい。県としては、飯田にできるリニアの駅を基点に、中信、北信へと交流を広げる構想だ。

しかし、人口が急激に減少していく日本に、こんな物が必要なのかと根本的な疑問がある。新幹線で十分ではないか。もちろん、リニアは成功すれば、米国やロシア、中国など大陸の大きな国に輸出したいという思惑もあるのだろう。さらには、鉄道におけるヤマトのような役割も担わされているのかもしれない。

飯田の人たちには、意外とリニアに対する期待感はない。日帰り客が増えるだけだし、飯田には、これといった観光名所もほとんどないから観光客は、北信へ行ってしまうというのである。確かに、今のままならそうなると私も思う。

しかし、外から見ると、飯田は稀に見る景観をもっており、一級の観光地になれると感じる。南アルプスの対岸の段丘の上からは、天竜川を挟んで街から一続きで南アルプスが一望できる。こんな景観はなかなかない。

きっと大手資本が入ってきてリゾートホテルができるだろう。そのおこぼれに預かろうなどという情けない考えでは困る。小規模ではあるが品質の高い宿泊施設を地元の小資本でも建てられる仕組みを作るべきだ。

そのためには、まず、世界の宿泊施設を見てきて、そのコンセプトとソフトを学ぶ必要がある。もちろん、アグリツーリズムやエコツーリズムなどのソフト開発もあわせて行う必要がある。飯田は、既にエコツーリズムでは全国でも最先端を走っているから、この点は、問題ないだろう。

泊まりたくなる場所として、ブランドイメージを確立する必要がある。軽井沢に新幹線が通って日帰り客が増えると言われたが、今も軽井沢は、宿泊客が圧倒的に多い。ゆっくり滞在するリゾートとしてのブランドイメージが確立しているからだ。

何か私にもできることがあったらお手伝いしたいものだ。次の世代に胸を張って渡せるようにする。それが、私たちの世代の務めだと思う。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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