ネパール 旅の顛末(その2)

つむじかぜ522号より


「今日中に日本に帰りたい」。カトマンズの空港で5時間以上待たされ、ようやく朝4時に出発し香港に到着したら、今度は、「乗り継ぎ便は満席で乗れない」。と告げられた。障害者のAさん始め、その介助者のみなさんも相当疲れている。3/4に起きたカトマンズの空港でのトルコ航空の事故が原因で、往路に4泊もした香港に、また泊まるなどとは、そう簡単には言えない。

私は、他社の便に乗れないか。何とかAさんとその介助者だけでも乗れないのか。ビジネスクラスはどうだ。とあらゆる可能性を探った。何を聞いても「not available」の回答しか返ってこない。「スタンバイしかありません」。もはや、航空会社のスタッフのこの言葉に従うしかなかった。とにかくあれこれ訴えて、優先順位を最上位にしてもらい、スタンバイをすることにした。全員乗れるとは限らないので、まずはAさんと2人の介助者を優先してもらった。

ところが、ここで問題がひとつ起きた。カトマンズで預けた荷物である。カトマンズでは、荷物を預けるときにグループチェックインをしている。往路では問題にならなかったのに、電動車いすの重量が基準をオーバーしているから超過料を払えというのだ。本来は、誰の荷物タグかNOを控える作業を、私がしなくてはならないのに、何とか超過料なしでと交渉しているうちにこれを怠ってしまった。

スタンバイするためには、一旦、荷物を受け取って、一人ずつ預け直す必要があるというのである。仕方なくみなさんに事情をお話し、香港へ入国したあと荷物を受け取って、キャセイ航空のチェックインカウンターでスタンバイをした。しかし、その間、ずっとドラゴン航空のスタッフが付き添って対応してくれていて随分助かった。障害者のケアーとして付いていたのだろうが、徹底した対応振りに感心してしまった。

「3名、OKです」。スタッフの声が天恵に思えた。私は、チェックインカウンターのすぐ傍のスターバックスで待っていたみなさんのところに駆けていって、「Aさん、日本に帰れますよ」と告げて、3名をカウンターにお連れした。やっぱり、3名だけか。という戸惑いが、Aさんにも他のみなさんにもあったが、時間がもうなかったので急いで手続きに入った。すると「あとの3名もOKです」。とカウンターのスタッフが私に告げた。「みんな一緒に帰れますよ」と叫ぶと、みなさんの顔がぱっと明るくなった。しかし、感激している暇はない。もう出発まで30分を切っている。ドラゴン航空とさらにはキャセイ航空のスタッフまで加わって、車椅子を先頭に67番ゲートまで大急ぎで走った。香港の空港の巨大さが恨めしかった。

成田空港には、往路、成田までAさんを送ってこられたBさんが出迎えにこられていた。「もう、帰ってこられないと思いましたよ」。まったくBさんの言うとおりである。よく帰ってこられたものである。みんなで最後の記念写真を撮った。ツアーの参加者ではなかったが、香港4泊を共にし帰路も一緒にスタンバイして帰ってきた25歳くらいの女性Cさんが、突然泣き出した。「なんで泣くのさ」。「だってだって、、、」

5月22日に、Aさんが報告会を開くという。またそのときに、みなさまにお会いできるのが楽しみである。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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