カトマンズにある世界遺産・スワヤンブナート寺院での地震で崩れたレンガの片付けを一時間ほどで途中離脱して、KVPT (KATHMANDUVALLEY PRESERVAITION TRUST) の視察に向かった。弊社のボランティアツアーで作業を熱心に取り組んでくださっている方々の「え?もう行くんですか?」という声なき声を背中に感じながらも、短い出張の間に、4.25ネパール大地震被災地の支援先に挨拶して回らなくてはならないため、少々焦りを感じていた。
ネパールは、何をやっても時間が掛かる、一日に回れる支援先は、移動時間も含めると2~3箇所である。特に今回は、どこでも丁寧に説明してくれて現場を見せてくれるので、予定以上に時間が掛かった。
KVPT は、1991年、オーストリア人のエドワード・セクラー氏によってネパールで設立されたNGOである。パタンを中心に寺院等の歴史的な建造物の修復を行っている。様々な国、団体、個人からの援助で活動しており、ひとつの修復プロジェクトに10年から15年程度の期間をかけて取り組んでいる。常時、30箇所ほどの修復を行っており修復事業が終わることはないそうだ。
実際に、修復現場や修復したものを見せてもらったが、一旅行者がいくらガイドつきで見学しても到底気がつかない細かな部分を昔の写真や絵などを参考に修復している。気が遠くなるような作業の連続だが、それを地味に続けるこうしたNGOが存在することに改めて驚嘆した。昨年の4月に一般に公開されるようになったMULCHOWKやSUNDARI CHOWKも彼らが補修し、彼らが一般に公開することを進言したのだそうだ。
何故、KVPTを支援することになったかと言えば、パタンのダルバールスクエアーのすぐ近くに住むNEPAL KAZE TRAVEL(NKT)のスタッフのスレシュが、KVPTのスタッフとその活動内容を以前から知っていたので、今回、どんな様子か聞いみたら、政府の援助はまだ入っていないということであった。そこで、是非弊社で支援しようということになった訳である。
今回は20万ルピーを支援金の中から渡した。特定の寺院を指定しての寄付も可能とのことだったが、小額なので、被災した寺院等の修復に使ってもらうこととし特に指定はしなかった。スワヤンブナート同様、ここにもまだ政府の予算は一切回ってきていないという事実には驚いてしまう。そのうちユネスコも含めて大きな予算が寺院の補修に付くと思うが、震災で崩壊した寺院など一部の補修や、瓦礫の片付け、本格的な補修時に再利用する窓枠や柱などの保存は既に独力で行っているそうだ。
KVPTのこうした修復活動を手伝うボランティア作業ができるか聞いてみたが、常時30箇所ほどで修復やリノベーションを行っているので可能だという。レンガ運びや、草取りなどの軽作業だが、専門知識を持った人がくるなら、それなりの現場を提供できる可能性もあるとのことだ。
KVPTは、活動の90%がパタンということだが、過去には、カトマンズのダルバールスクエアーも修復している。修復そのものは継続かつ永遠に続くと考えてよい。必ずしも専門知識をもった人でないと修復にかかわれないということはない。地震の災害ボランティアとは少々趣旨が違うが、世界遺産をこうして支えている人たちと今回知り合えたことがとても嬉しい。地味なことだが是非今回の支援を将来につなげたいと感じた。
それにしても、SUNDARI CHOWKは、実に美しかった。中心にある水差し口の彫刻がレプリカだとは予想だにしなかったが、本物は盗難にあってしまったそうだ。 レプリカ完成後、なんと10日後に本物が出てきたというから何かがあると感じてしまう。その後も、本物は博物館に保存されている為、今でもやっぱりレプリカのままである。KVPTの仕事を知っていただくにはこんな素晴らしいものはそうはない。この金色に輝くレプリカは必見である。