根性主義とオランダ方式

*風のメルマガ「つむじかぜ」558号より転載


今春、日本のスピードスケート界は、約30年にわたって続けてきた事業団任せの選手強化策をやめてナショナルチームを組み、オランダから専任のコーチを招くことを決めた。その後、半年で早くも効果が現れ始め、ナショナルチームに参加した選手たちは、何年にもわたって出せなかった自己ベストや日本新記録を出し始めたというのである。

オランダは、ソチ五輪で金メダル8、メダル総数24を獲得する大活躍を見せた。なんと、24個中23個がスピードスケートで得たもので、同競技の代表選手は男女各10人ずつの20人である。20人で23個のメダル獲得。男子は10人中9人がメダリストとなった。その秘密こそが、日本のナショナルチームの伸張の理由らしい。

先週、どこのテレビ番組か忘れてしまったが、このナショナルチームのことを特集していた。「ハードなトレーニングをする日と、身体を回復するリカバリーを目的とするゆるいトレーニングをする日を意識的に区別して行い、ハードなトレーニングのときは100%出し切れるようにする。但し、ハードなトレーニングをするときは時間を短くして集中して行う」こう、オランダのコーチたちは、口を揃えていう。

日本人選手たちは、「日本のトレーニングは、ハードなトレーニングが毎日続くので、自然と80%程度の力でこなすようになっていたが、今は、自分の限界まで出し切れるようになった」とこれまた異口同音にいうのである。

もちろん、トレーニングの中身こそがノウハウなのだろうが、基本は、このハードトレーニングとリカバリートレーニングをバランスよく組み合わせることなのだそうだ。しかも日本人選手たちが“頭も身体も疲れない”と口にしているのがとても印象に残った。

がむしゃらに苦しいトレーニングをして、それに耐えられる体と精神を身に付けて初めて勝てる。そう日本人は誰しもが信じているように思う。しかし、それが、本番で力が発揮できない原因を作っていたとすれば、なんと滑稽なことか。もちろん、これはスピードスケートに限ったことではなくどんなスポーツにもいえよう。否、スポーツだけではない。仕事においても適用できそうだ。“頭も疲れない”というのだから、仕事の能率も上がるに違いない。

確かにハードな毎日が続くと仕事の能率は大きく落ちていく。気力が続かない。だから、何時もだらだらとした能率の上がらない仕事になっているのかもしれない。ONとOFF、集中する場合とゆったり仕事をする場合に分けたほうがよさそうだ。

かといって私は、根性主義を全面的に否定するつもりはない。人は、最後は根性だとさえ思っている。根性のない人間は嫌である。しかし、そんな私にとっても、このオランダ方式は目からウロコである。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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