民泊

*風のメルマガ「つむじかぜ」581号より転載

最近、東京、大阪などのホテルの予約が取れないという話をよく聞く。値段も随分高くなっている。原因は、訪日客の急増。中国人を筆頭に外国人に日本のホテルは占拠されてしまったのかと思えるほど宿泊施設の供給が逼迫している。

そんな中、最近の流行であるシェアリングエコノミーの象徴となった“民泊”に注目が集まっている。2020年のオリンピック・パラリンピックまでは訪日外国人は増えるが、その先は不透明。今からホテル建てても、投資を回収できるかわからない。ならば民泊で短期決戦で勝負しようというわけだ。

テレビでもしばしば報じられるように実態はかなり先行しているが、法規制の見直しが追いついておらず、“旅館業法違反”を放置している状態が続いてきた。そのため4月1日に旅館業法施行令が改正され、簡易宿泊所の要件が緩和され、事実上、政府は民泊容認の方向を示した。

具体的には、簡易宿泊所は従来、延べ床面積33㎡(10坪、20畳)以上が要件だったが、客数10人未満なら1人当たり3.3(1坪、2畳)でよくなった。また、玄関帳場 (フロント)についても、現在は、厚生労働省の通達でホテルや旅館同様に設置義務を課されているが、これが撤廃される可能性が出てきたのである。

この2点が緩和され、10人未満の民泊が簡易宿泊所として認可を受ければ、旅館業法上の問題はなくなる。もちろん、この他に消防法で自動消火装置の設置が義務付けられていたり、立地が、建築基準法で宿泊施設の用途に使用できない土地に指定されていたりするので、すべての法をクリアーしたわけではないが、かなり要件は緩和されたといえよう。

ところで、民泊というと、農家民泊のように家主が実際に住んでいる民家に泊まるホームステイのようなイメージを持つ方も多かろう。しかし、最近は、家主が住んでいないマンション型の民泊が増えている。フロントがないからチェックインができない。そこで鍵の受け渡しが問題になる。最近では、マンションの部屋の入り口のノブに番号鍵がついた小さな箱が外れないように掛けてあって、その番号鍵のNOをインターネットで受け取り、小さな箱を開けると部屋の鍵が出てくるという仕組みまである。

パリのテロ事件を起こした犯人が民泊を使っていたと聞いたから言うわけではないが、こんな仕組みじゃあ、犯罪の温床になる可能性を否定できない。犯罪とまで行かなくても、ゴミ出しの問題などで近隣の住民とのトラブルが数多く発生している。

そんな中、旅館業法施行令の改正などという対処療法ではなく、“民泊新法(仮称)” を作ろうという動きが本格化し6月には骨子がまとまる。規制緩和にあまり反対はしたくないが、ちょっと性急すぎないかとブレーキを掛けたくなる。このままでは、取り返しのつかない大混乱が始まるような気がする。

軽井沢町では、4月以降に新たに玄関帳場を設置する条例を制定し民泊拒否ともいえる姿勢を鮮明にした。日本中でそんな自治体が増えそうである。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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