初雪

*風のメルマガ「つむじかぜ」604号より転載

まだ11月なのに東京に積雪とは驚いた。今年は寒くなると報じられていたが、その前触れということか。冬で緑が少なくなり、茶の色になった都会の風景が白くなる。乾燥した空気が潤いを取り戻し心が和む。私の田舎も雪はあまり降らなかったが、雪が降ると少年のころを思い出す。

あの頃は、雪が20cmくらい積もると、朝早目に学校へ行き、校庭に飛び出て雪合戦をし雪だるまを作った。濡れた手袋は、教室のストーブで乾かした。当時は、毛糸の薄い手袋だったので防寒が極めて悪かったがそれでも雪で遊ぶのは楽しかった。

国道から少しそれ、民家につながるような坂道なら、普通の道でそり遊びもできた。私の実家には、私が物心ついたころにはすでに“そり”があった。祖父が作ったものだと聞いていたが、6歳上の兄も使い、随分使い込んでいたがよく滑った。そりは新しいものより使い込んだものの方がよく滑る。もちろん、プラスチックのそりなどあろうはずがない。みんな、それぞれ家のそりを持っていた。一つ一つ形が違い、滑りの良さも違っていた。

最近、年齢を重ねにつれて雪は少々厄介になってきた。雪国の方からしたら“そんな弱音じゃあ生きていけないぞ!”と怒られそうだが、雪が積もろうものなら、まずは、転倒の心配をしなくてはならない。若い時は、雪の上を底がツルツルの革靴で歩いても平気だったが、今では、スーツを着ていても靴はトレッキングシューズにするようにしている。流石に、東京では、雪国で売っているような底に滑り止めがついた長靴は売っていない。

10~15cmほど積もると、私のマンションでも雪かきが始まる。3年ほど前に、それくらい積もったときも、マンションの住人が駐車場で、自分の車の周りに積もった雪を掻いていた。(すこし経てば解けるのに。都会人はせっかちすぎる)などと思いながらも、雪が残って解けないと周りに迷惑をかけると思い直し、私も雪かきをした。面倒だとは思いつつも、雪だるまを作って遊ぶ少年時代の心境に戻ったような興奮があった。そんなのんきな話をしたら、また、雪国の方に怒られそうだ。

今日、家に帰ってニュースを見れば、雪で転倒してケガ人が出たなどというニュースが流れるに違いない。東京人は実に雪に弱い。というか、見栄っ張りなのか、長靴などを履けば転ばないのに、若い時の私のように革靴を履いている人が多い。これでは転ぶのは当然だ。

11月に東京で積雪とは、やっぱり異常気象と言えよう。それでも、東京で雪が何日も降り続くことはあるまい。積雪とてその量は知れている。雪国のご苦労思うと心から感謝しなくてはならない。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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