中野の飲み屋街

*風のメルマガ「つむじかぜ」649号より転載

中野の北口の改札を出ると目の前に、サンロードというアーケード街の入り口が、あんぐりと口を開けている。長いトンネルのように奥に続いているが、その人通りの多さは半端ではない。平日だろうが土日だろうが、昼夜関係なく大勢の人が歩いている。ぶつかりそうになるのを避けて通るのが大変なほどである。シャッター街で悩んでいる地方の方々がみたら卒倒しそうである。

そのサンロードの駅を背にして一本右に細い路地の飲み屋街がある。そのまた右にも細い路地があり小さな飲み屋が並んでいる。なんと、その右にもバーなどのカウンターだけの店が並んだ少々薄暗い路地の飲み屋街がある。これら4本の通りを横につなぐ路地にも飲食店がひしめいている。

中野に初めて来た方は、これに「へえ、飲み好きには天国のようなとこですねえ」と羨ましそうに言われる。しかし、こんなに沢山飲み屋さんが並んでいても、行く店は意外と限られているものだ。私の場合、10軒ほどの店をとっかえひっかえ使っている。よくよく考えればもったいない話である。

贔屓にしていた店が、ここ一年でいくつか閉店した。後継ぎがいない。それが理由である。仕方がないので、新しい店を開拓しようとあれこれ試してみた。どうやって探すかといえば、ネットで評判を見てから行く。しかし、それが、あまり当てにならないことも段々わかってきた。やらせとは言わないが、好みもあるから仕方がないのだろう。

最近、やっとその方法で美味しい焼き鳥屋を見つけた。しかし、ネットのせいだろうか。人気がありすぎて、よほど早い時間以外は予約なしでは入れない。予約してまで、焼き鳥屋に行く気にはなれない。

先日、偶然、夜の9時ぐらいにこの焼き鳥屋に入ることができた。4人をお連れしたが、「この店おいしいねえ。前回行った熟成肉の店も美味しかったけど、中野はいいですねえ」。と褒められた。もう、中野で仕事をして26年になる。もしかしたら、住人よりも長く中野で時間を過ごしているかもしれない。中野が褒められると我が事のように嬉しい。

最近は、チェーン店が増えているが、それでも中野は小規模な店が多く、個人経営と思われるような店が続々とできている。「大丈夫かあ? こんな小さな店?」と思わせるような立ち飲み屋までいくつかできた。外国人も多く見かけるようになった。何だか、通りに机や椅子がはみ出している店も増えたようだ。きっと、ときどき取り締まりにあうに違いない。

中野は、ますます雑多な街になっていくようだ。まだまだ知らないが、きっといい店があるに違いない。楽しみながら発掘しようと思う。


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


シェアする