*風のメルマガ「つむじかぜ」669号より転載
先日、観光庁主催で「バリアフリー観光における集客を目的としたセミナー」が行われ参加してきた。単に福祉の問題としてバリアフリー観光を考える時代は終わり、大きなマーケットとして捉え持続可能な産業として取り組むべきだという趣旨だった。
確かに、今までは、旅行会社では社会貢献の一環としてバリアフリーツアーを考えていたが、最近は、市場として捉えようという動きが出てきている。一昨年の4月から施行された障害者差別解消法への対応でも、差別はいけないという倫理の問題としてだけではなく、新たな市場として積極的に取り組もうとされた。
セミナーの中では具体的な事例が紹介されたが、これがなかなか興味深かった。最近は、ホテルや旅館ではバリアフリールームから予約が埋まっていくそうだ。バリアフリールームというと、車いすの障害者が使うものだなどと思っていたら大間違いである。超高齢化した日本では、家族などで使いたいという予約が沢山あるそうだ。まさにユニバーサルデザイン。誰でも使える素敵なものなら需要が高まるということである。むしろ、普通の部屋は、それだけで使えない人たちの需要を遮断しているということになる。
ところが、バリアフリールームといっても病院のリハビリルームのような手すりだらけの部屋はダメ。非日常的な旅の気分を味わえる素敵な部屋がいい。家のテレビと同じ大きさではがっかりするから超大型にしてほしい。そんな要求が多いそうだ。そりゃあ誰だってそうだ。即ち、利用者の欲求は、車いすで支障のない部屋に泊まりたいということではなくて、素敵な部屋に泊まって旅行を楽しみたいという当り前の欲求なのだ。
観光地でも、どこなら車いすで行けるという情報ではなく、お勧めの場所やレストラン、ショップなどにどんなバリアがあるかが知りたい。何故なら、バリアとはパーソナルなものだから、一人一人何がバリアになるか違う。友達と行けば乗り越えられるバリアだってあるというのだ。そう説明されて、なるほどと唸ってしまった。障害者だからといって、特別なことはなく、旅行を楽しみたいということは同じなのだ。
では、弊社のツアーに誰でもご参加いただけます。となるかといえば、とても首を縦に振ることはできない。行くところはバリアだらけである。しかし、障害を持っているというだけで頭からお断りするようなことはもちろんしない。問題は山ほどある。行ける方法はあっても、人を配置すれば費用が余分にかかるだろうし、一緒に行かる方々の理解が得られるかという問題もあるだろう。しかし、どうやったら行けるかを一緒に考えることはできる。それだけはお約束する。
★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。