*風のメルマガ「つむじかぜ」670号より転載
こんなに痛い注射は、30数年前に眉間を縫ったときに形成外科で打った時以来だ。
30代半ばだろうか。無精ひげをチラホラのばした若い男性医師が「ちょっとちくっとしますよ」と、軽い口調で言いながら、慣れた手つきで上向きにした私の右手をとり、細くて小さな針を人差し指の付け根に刺した。一挙に激痛が広がった。
今朝はいつもより一時間ほど早く家を出て、会社の近くの整形外科に行き治療を受けたのだが、診断は「ばね指」とのことで、炎症を抑えるためのステロイド剤を注射されたというわけだ。
指にされる筋肉注射は痛いと聞いたことはあるが、これほどまでとは想像していなかった。耐えかねて「オオー、かなり痛いですよ、ウー!」と唸ったが、看護師は「そう、とても痛いんですよ」と、素っ気ないものだ。
こんなに痛いなら、やる前に言ってくれよ! と思うが、それを聞いたら注射を避けたくなっただろうから、まあ仕方がない。
刺された後もしばらくは痛みが続いた。「結構効きますから、きっと良くなりますよ」という医師の慰めの言葉にも、恨めしく唸り声を上げるばかりだった。強い薬だからだろう。3回までしか注射はできないので、それでも治らなければ手術になるそうだ。
注射ついでに、ターンテーブルからスーツケースを下ろす際に捻って以来、2月から痛みが引かない左腕も診てもらった。
「テニス肘かな?」
「あの、テニスはやらないですが」
「やらなくてもなるんですよ」
「どうすればいいんですか?」
「痛いと感じることは止めてください。なるべく腕を使わないように」
「シップしておけばいいですか?」
「何もしなくていいですよ。シップして痛みが引いて腕を使えば逆効果です。生活習慣の改善が一番です。よろしいですね?」
結局、治療法は特になく「なるべく腕を使うな」ということだったが、その諭すような言い方は少々腹立たしかった。子ども扱いされて怒るお年寄りがいるが、解るような気がした。しかし、そのはっきりした態度には好感が持てる。薬を出さない姿勢も気に入った。診療代は520円。なんだかとても安い。
なるべく腕を使うなということで、本日はここまで。
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