小笠原出張①

*風のメルマガ「つむじかぜ」690号より転載

8年振りに小笠原へやってきた。今年の夏は間断なく日本列島は台風に襲われた印象だが、9月8日に竹芝桟橋を出航した時点では太平洋上に台風はなく、24時間の穏やかな船旅を楽しんだ。今日、これから帰路便に乗船するが、その後に発生した台風の影響もなさそうだ。

天候のみならず、唯一の交通手段である小笠原丸が3年前に新しくなって格段に過ごしやすくなったのも快適な船旅の要因だ。所要時間は一時間しか短くなっていないが、船の大きさはほぼ同じでも定員を大幅に減らしたことで、護送船のような窮屈感はなくなった。

例えば、2等でも胸から上は隣との仕切りができて少々幅広のマットレスが備えられ、多少なりともプライバシーが保たれるようになった。雑魚寝ではあってもエリア番号がふられ、先を争って場所取りをする必要もなくなった。新たに設置された40人ほどが入れるラウンジも、一人で過ごしてもいいし何人かで談話するのにもいい。もちろん豪華客船のようには行かないが、かなりストレスがなくなったといえよう。

小笠原は2011年の6月に世界遺産になり、その直後は観光客もかなり増えたそうだ。しかし、ブームが去って案の定減少に転じた。ところが新小笠原丸が就航した事に加え、今年は返還50周年でマスコミへの露出度も多く、また一段と旅行者が増えているそうだ。現在、観光客は年間約2万人ほどに達し、世界遺産登録前に比べると30%くらいは伸びていることになる。

その影響だろう。一番驚いたのは、エコツアーやマリンスポーツを扱う業者がかなり増えたことだ。

実態は専業よりは兼業が多いそうだが、山、海のエコツアーや、ダイビングやシーカヤックなどのマリンスポーツのガイドが総勢100人を超えるような観光地は日本では少ない。小笠原のブランドを確立したいと、ガイドの認証制度をつくり質を保っているそうだ。

私は2003年から世界遺産登録までに7度小笠原に来ているが、そのころよく知っていたガイドたちはもうベテランガイドの域にはいっている。ベテランガイドは若いガイドに技を伝承していく。やっと小笠原も第二、第三世代へと受け継がれ伝統が育まれようとしているようだ。(次週へつづく)


★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。


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