*風のメルマガ「つむじかぜ」718号より転載
ロキソニンを買おうと思い大手チェーンのドラッグストアに立ち寄った。店員に薬の名前を告げると、「今、薬剤師が不在で販売できません。あと30分で戻りますので、その頃またおい出ください」と言われた。どうも薬剤師が昼食に出たらしい。労働力はいたるところで不足している。薬剤師を複数確保するのは難しいのかもしれない。
30分も待てないし、通りの向かいにも別のドラッグストアがあったので、そちらに行って購入した。やはり薬剤師が出てきて、iPadを使ってアレルギーの有無や以前使用したとき異常はなかったかといった幾つかの質問を受けた。少々形式的なものに感じるし面倒だが、きちんと法を守っている姿に安堵した。薬は、命にかかわる。こうした規制は必要だろう。安心して薬を買えない国が世界にはいくつもある。
旅行業も法律で規制されている。最近はインターネットによって旅行会社抜きの流通が当然のように流布しだしたので、法律なんか取っ払ってもっと自由にやれないものかといった議論もあるが、一昨年、世間を賑わせた「てるみくらぶ」のような詐欺まがいの例もあるし、日本の旅行会社ではないものの中国のOTA(オンライン旅行会社)大手・シートリップの海外ブランド「トリップドットコム」では、高級ホテルの空室がないのにあるかのように偽って販売し、それに気が付いた消費者が取り消ししたらキャンセルチャージを請求するという、常識では考えられないようなことが起きた。そう簡単に法律は取っ払えない。
性善説など考えても空しくなるばかりだが、かといって消費者の自己責任だと言い放つのも乱暴だ。消費者保護も行き過ぎれば過保護になるが、安心して暮らせる日本社会の存在は世界でも貴重である。しかし、そんな日本でも、すっかりネット社会になり、いつ何時、事件に巻き込まれるかも分からない。こんな無責任なものを発明した奴は誰だ、などといっても仕方ないが、時々、叫びたくもなる。
ドラッグストアでも、将来は薬剤師ではなくAIに質問されることになるのかもしれない。あんな事務的な質問を面倒そうに形式的にこなすだけなら、悲しいが、AIで十分だとつい思ってしまう。そう思う自分に後味の悪さを感じた。
★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。