ハマのドン

*風のメルマガ「つむじかぜ」737号より転載

先週8月22日、林文子横浜市長が山下埠頭にIR(Integrated Resort・統合型リゾート)を誘致すると発表した。これに対し、“ハマのドン”こと横浜港運協会会長の藤木幸夫氏が、「顔に泥を塗られた」として同協会をあげて猛反対している。
同氏は、菅官房長官、二階自民党幹事長など中央政界の要人と親しく、林文子横浜市長の後援会長も務める超実力者である。
8月23日の日刊スポーツでは、藤木会長は、「ハードパワーとは横浜選出で陰の市長ともいわれる菅義偉官房長官のことか」と尋ねられると、「そう思うのはあんたの自由だが、菅さんは安倍さんの腰巾着。安倍さんは米国の腰巾着。安倍さんも菅さんもトランプさんの鼻息をうかがって寂しいな」と答えた。と報じている。
元々は「横浜IR」に好意的だったそうが、ギャンブル依存症の恐ろしさを知るに至って、「街が死ぬ」と、反対派の急先鋒へ転じたそうだ。(朝日新聞デジタル2019年4月26日参照)しかも、カジノに頼らない観光開発を目指す「横浜港ハーバーリゾート協会」まで立ち上げ、「山下ふ頭は我々の聖地。ここで汗を流し、死んでいった港の先輩たちが『横浜の将来をちゃんとしろよ。ばくち場をつくるんじゃないよ』と私に言わせている。」と豪語し気炎を上げている。
藤木幸夫氏の父・藤木幸太郎氏は藤木企業を起こし、現在、横浜港の主要な埠頭で事業を行っているが、幸太郎氏は、沖人夫たちがヤクザの賭場に行かないように会社で賭場を開いたそうだ。もちろんテラ銭は一切取らなかったという。
経済優先で、ギャンブル依存症には配慮が必要といいつつ目をつぶってIR誘致に踏み切った横浜市。片や、横浜という街と浜で暮らす人々の生活を守ろうと頑固に立ち上がった88歳のハマのドン。怖いものは何もないに違いない。
私には、藤木氏が言っていることの方がまともに感じる。特別なことを言っているわけではない。子々孫々に引き継ぐ未来を考えて、カジノ抜きの街づくりをしようというのである。経済性では計り知れないものがそこにはある。この衝突、しばらくは大注目である。

★弊社代表取締役原優二の「風の向くまま、気の向くまま」は弊社メールマガジン「つむじかぜ」にて好評連載中です。

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