シムラの教会
デリーのバスステーションから出発した長距離バスに乗り、シムラに向かった。
途中、チャンディガールのバスステーションで停車した。チャンディガールは、ダラムサラへ行くときに立ち寄る街だ。チャンディガールを出て少し走るとシワリク丘陵地帯に至り、坂道になる。シムラまでは林の中を走るドライブコース。シムラに着いて、街をぶらつく。シムラは英国植民地時代の夏の首都で、今では観光地というより、インド人観光客が滞在する避暑地となっている。同じ避暑地でもダージリンと異なり、ヒマラヤが間近に見えるわけでもなく、外国人観光客にとっては、マナリや、キナウル、スピティに行く中継地でしかない。
翌日、東のキナウル、スピティ地方へ向かった。
シムラを出てしばらくしてサトレジ川に出合う。サトレジ川は、西チベットのカイラス山、マナサロワール湖の西にあるランガク・ツォ湖を水源とする川で、象の口から水が湧いてでているという伝説がある。ちなみに、インダス川は、カイラス山の北のライオンの口から、ガンジス川の支流のカルナリ川は、ランガク・ツォ湖の南の孔雀の口から、中央チベットを横断する大河ヤルンツァンポ川は、マナサロワール湖の東の馬の口から湧き出ているとされている。
サトレジ川沿いに東に向かっていくにつれ、景観が少しづつ変化する。山を覆っていた林がまばらになり、岩肌が目立つようになる。道路はいたるところ工事中であったが、大半は舗装されていて楽なドライブであった。
サトレジ川沿いの本道からはずれ南の山の斜面を登り、サラハンという村に着いた。
観光地であるが、ネパールによく見かけるような山腹にある感じのいい村である。この村には、ビマーカーリー寺院というヒンドゥ寺院があり、カーリー女神を奉っているという。寺院の上部は木造で、上に行くにつれ広がっていくというこの地方特有の珍しい構造であった。寺院に入るとき、チベット仏教寺院のしきたりとは反対に、あえて帽子をかぶらなければならないという規則であった。最上階にいたり、ヒンドゥ教の神々が奉られている部屋に入り、これからの旅の安全を祈願した。(つづく)