最奥の僧院 プクタル・ゴンパ

トルコブルー色に輝くツァラブ川とプクタル・ゴンパ
ラダック地方のさらに奥に位置するザンスカール。そんなザンスカールでもさらに奥地にあるプクタル・ゴンパは、切り立った崖に空いた巨大な洞窟の中に建てられた、その独特のビジュアルが印象的。何度もガイドブックの表紙などに取り上げられています。ザンスカールに行くなら是非とも行ってみたい、と思う方も多いゴンパ(僧院)です。
以前はザンスカールの中心で車道の通じているパドゥムから、南のルンナクの谷を遡るトレッキングで往復1週間ほどかかりましたが、パドゥム~マナリルートの車道が開通し、プクタルの麓のプルネ、チャーの村から片道1時間半程度のトレッキングでいけるようになりました。その実際をご紹介します。

ザンスカール概略図
ルンナク・カルギャクの川沿いの絶景を行く
歩く時間は往復4時間ほどですが、標高は4,000mを越える地点からのスタート。全行程で3,800m以上と富士山の頂上よりも高い場所を歩きます。少しでも高度に身体を慣らしたい、ということでまずはルンナク川、カルギャク川を遡り、ルンナク地方の聖山ゴンポランジュンを目指してドライブです。


道中は岩山に左右を囲まれたカルギャク川沿いを走ります。この地域は耕作可能な平らな土地が狭く、半農半牧の生活様式でも特に牧畜の割合が高いので、あちこちで放牧されている家畜を見かけます。夏になると、いまでも一部の村人は村の上部にある放牧地に家畜を放牧しひと夏を過ごし、乳製品を作るための「ドクサ」という作業小屋が作られます。また、ザンスカールの中でも最後まで車道が通っていなかったため伝統的な村落が残されていて、ノンビリしたチベット文化圏らしい風景が楽しめます。村と村の間には草原が広がりヤクや羊などの家畜が草を喰んでいます。
途中、民家を訪れて暮らしぶりを見せていただいたり、お茶をご馳走になるのも良いでしょう。


そしてザンスカール側の最後の集落カルギャクを過ぎると、前方にひときわ目立った岩峰が聳えています。
聖山ゴンポ・ランジュンです。現地語でゴンポは大黒天、ランジュンは自然に生じた、という意味で、この山は大黒天を象徴しています。麓の川沿いの標高は4,300mほど。麓には夏場だけ営業するキャンプとレストランがあるのでお茶を飲みながらしばしその勇姿を楽しみましょう。岩山の向こうには5000mを超える峠があり、その向こうはヒマーチャルプラデシュ州。ヒンドゥー教の世界が広がっています。
気になるお宿は?
ゴンポ・ランジュンからパドゥム方面に引き返し、プルネに宿をとります。車道が通じてからトレッカーも増え、宿泊施設も格段に快適になりました。翌日のトレッキングに備えて早めに休息を取りましょう。


プクタルへの道
現在プクタルへのルートは2つ。プルネから川向こうのチャー村を周り4100mほどの地点から斜面をトラバースするルートと、プルネから一旦河床まで降りて川沿いに歩くルートです。どちらも所用時間は1時間から2時間くらい。舗装はされていませんが、割と歩きやすい巡礼路が作られています。

右側の河床のルートがプルネからの道、左側の斜面のルートがチャーからの道
工事さえなければプルネからのルートのほうが安全で歩きやすいのですが、現在車道の延長工事中で崩れていて非常に危険なので、チャー村から往復する人がほとんどです。しかしチャー村からのルートも、横は河まで300mほど落ち込む断崖の縁を歩くので高所恐怖症の方にはおススメできません。フラフラしないようにしっかりと深呼吸をしながら進みましょう。(ツアーでは道路状況をみてどちらのルートを歩くか判断します。往路と復路で別のルートを歩く場合もあります)

河まで続く斜面はスリル満点

プルネからの河床の道
ゴンパの中は?
現在、コンパの手前にはゲストハウスが建設され、小さな食堂も併設されているので温かい飲み物や、インスタントラーメン程度の食事は可能です。ゲストハウスからさらに30分ほど登ってゴンパを目指します。
お寺は15世紀前半に、ゲルク派の開祖ツォンカパの直弟子チャンセム・シェーラブサンポが創建されたそうで、当然ゲルク派です。ガイドブックによると60名ほどの僧侶が在籍しているそうですが、最近はもっと設備のいい僧侶学校などで修行する若いお坊さんも多く、実際にお寺で見かけるお坊さんはそれほど多くありません。台所を訪ねるとバター茶をふるまってもらえます。
実際に中に入ると、崖の洞窟の中に建てられたお寺ということで、内部は迷宮のようです。
トレッキングでしか行くことができない地理的な条件から、ザンスカール「最奥の僧院」として、長い間旅人のあこがれだったプクタルゴンパですが、あと歩いて僅か2時間ほどのところまで車道が迫ってきました。間もなくお寺の目の前まで車道が繋がることでしょう。しかし、その時には、皆さんの目には現在ほど魅力的は映らないのではないのでしょうか?
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