今日は、つれづれと、そこはかとなく、おもむくままに。
ラサではサカダワ(涅槃会;ねはんえ)がピークを迎えつつある。
前回にも書いたが、サカダワとは釈尊の生誕、悟り、そして入滅を祝福する期間で、
この間は多くのチベタンが巡礼路に繰り出す。
巡礼路には露天商など(仏具売り、マニ車修理屋など)も俄かに現われ、
五体投地をする信心深い巡礼者の中にまみれて、なにかと賑やかになる。
彼ら露天商にも劣らず、活気づくのが多くのパンゴ(乞食、物乞い)たちである。
ここで一句。
涅槃会に 連なる乞食 数珠つなぎ
パンゴたちは、円環巡礼路リンコルに列をなして座り込み、
サカダワ中で最も聖なる日(チベット暦4月15日)には、
相当のお布施を巡礼者たちから施してもらうことになるのである。
ツイているパンゴで、一日700~800元ほど(の売り上げ?)!
彼らはなんと、たった一日で、
ラサの茶館で働く女の子たちの月給ほどの額の「施しを受ける」のである。
次にお知らせです。
大阪と東京で来月、チベット講座(風カルチャークラブ)を開講します。
まずひとつは、大阪で「チベットの民間信仰と聖地巡礼」(6月26日)。
二ヶ月前に同講座を東京でやらせて頂いたのだが、お陰様で大変多くの方に来て頂き、
本当に有り難かったです。
本講座の内容に関しては、こちらをご参照に。
もうひとつは、東京にて「チベット概論」の講義(6月30日)です。
チベットの風土、民族、文化、言語などについて幅広~く、
スライドをお見せしながら、「チベット初心者」の方から玄人(!?)の方の
ご関心に応えるよう、お話したいと思います。
「チベット概論」といえば、
僕はこのようなタイトル・内容の講義を今まで受けたことがない。
十年前、初めてダラムサラ/ラサを訪れたとき、チベット語はおろか、
チベット文化の基本的な知識でさえ、極めて貧弱であったのを覚えている。
その当時、僕の頭の中は<人類学の様々な理論>で詰まり過ぎており、
なんとも頭でっかちで、今思い出しても滑稽で笑ってしまう。
十年前、僕のいたロンドン大学では、密教仏典の講義、チベット建築の講義、などはあったが、
「重箱の隅をつつく」的であまりにも専門じみており、
チベット初心者の僕には、ハードルが高すぎたのだった。
極めつけは、チベット語の授業であった。
イギリス人講師は我々学生に、チベット語のアルファベットとその規則について一通り教授したあと、
「さあ、文章を読んでいきましょう」と、
早速三回目の授業から、辞書を引き引き古典の読解授業に入ったのだ。
文法の解説、簡単なセンテンスの練習など全く抜きで。
一部の学生や僕などは、あまりにも変だと思い、先生に尋ねたが、回答は
“That’s how we (scholars) learn Tibetan.”
(これが我々研究者がチベット語を学ぶやり方だ)
とか言われ、てんで話にならなかった。
受験英語で「英語がしゃべれなくなる」訓練を長年積み重ねてきた僕は、
チベット語では同じ轍を踏まないぞ、と思っていたので、
ためらうことなく脱落したのであった(笑)。
その先生はもちろん、チベット語が<しゃべれなかった>のだ。
つれづれに書いているが、つれづれついでにもうひとつ。
ロンドン大学時代のときの後輩から、先日メールが来た。
彼女は今、日本のある研究所で人類学の博士課程に進んでいるのだが、
今ちょうどフィールドワークの最中で、その様子などをある出版社のブログで文章に綴っている。
場所はナイジェリア。
写真も絵葉書かと見まがうほど魅惑的で、
彼女の素直な感性がそのまま言葉となって、
非常に透明感のある、かっこいいブログになっている。
本ブログもそうだが、人類学をやっている人間が、現場から「フィールドノートのかけら」みたいなものを
公のブログにアップするというのは、今ではごく普通にやられているのだろうか。
十年以上前初めて彼女に会ったとき、まだ十代の少女であったが、
そのときからこの子は将来「何か」になるな、と思っていた。
案の定、今はその「何か」になる途上にあるような気がする。
近い将来、風のカルチャー講座にお呼びして、
ぜひ【ナイジェリアの造形芸術】について語ってほしいものである。
* * *
と、だらだらつれづれてしまったが、
明日(5月27日)は、チベット暦の4月15日、サカダワで最も聖なる日。
リンコル(7,8kmに及ぶラサの巡礼路)を周ろうと思う。
「スピリチュアル計算高い」チベット人にも負けないよう、罪を滅し、功徳を積めるように!(笑)
Daisuke Murakami
5月26日
(ラサの)天気 曇時々晴れ
(ラサの)気温 5~15度 (晴れたら20度は超えます)
(ラサでの)服装 昼間はシャツ、フリースなど。 夜はフリース、ジャンパーなど。 日焼け対策は必須。 空気は非常に乾燥しています。雨具は持ってきたほうがよいでしょう。また、風も強く吹くことも多いので、マスクなども役立ちます。