出張で秋田県に行ってきました。わが故郷です。
場所は秋田県北部、白神山地のお膝もとにある藤里町と八峰町です。
最初、八峰町ってどこ?? と思ったのですが、平成の大合併で八森町と峰浜村が合併したとのこと。やはり旧名のほうが私にはしっくりきます。八森といえば、秋田音頭で「♪秋田名物~八森ハタハタ~」と歌われた場所。
時節柄、ちょうどハタハタ漁の時季でもあり、かねてよりあたためていた企画のこともあって、ハタハタ漁も下見することにしました。
秋田県民はハタハタが大好きで(特に昔の人ほど)、この時期になるとハタハタが獲れることを心待ちにしています。が、ハタハタ漁のことは話しには聞いていても、実際に見たことのある県民はじつはあまりいないもので、かくいう私もその一人でした。
ちょうど漁師さんにツテがあり、見学したいと打診したところOKとのこと。しかも、家さ泊まればいいね、というお誘いまでいただき、お言葉に甘えてお世話になることにしました。
お宅にあがり、お茶の間に通されたときに奥様が正座して待たれており、ご主人も座り直したところで、こちらも正座でお辞儀してご挨拶。東京ではこうして挨拶することが少なくなったような気がします。
その日は、夕方少し早めに着いていたのですが、そのまま茶の間で漁の話しや、漁業の今昔、ハタハタが一時激減して3年間自主的に禁漁したときのこと、都会と地方の話などなど話は尽きず、途中で夕食をはさみながら夜更けまで話し込んでしまいました。
日本海側に本格な冬の訪れるとき、雷が鳴り、海が荒れるのですが、その時期になると深海魚であるハタハタが産卵のために大量に浜に押し寄せてきます。ということもあり、ハタハタのことを鱩とも書きます(鰰と書くことが多し)。
泊めてもらう前日の海は大荒れで雷が鳴っていたことあり、これは来るのでは! と期待していたのですが、ご主人の話では今シーズンは、まだ沖合いにいるらしく、少し遅れているようだから、明日はまだ来ない可能性のほうが強いなぁとのこと。こればかりは仕方ありません。
その夜、外に出て岸壁沿いを歩いてみました。真っ暗な海の向こうで、たくさんのハタハタたちが浜にくる機会を今か今かと伺っている様子を想像すると、なんだかとても愛おしい存在に思えてきます。
でも、まぁ食べるんですけどネ…
そして、就寝した翌朝…。
「ハタハタ来てるよー」
という奥さんの声に起され、それ! とばかりに港に向かいました。 ちょうど沖で獲れたハタハタを満載した木船から魚を水揚げしています。プラスチック製の箱に次々と入れられたハタハタが近くにある施設に運び込まれ、おなじみの発泡スチロール箱に仕分けされていきます。ほんの数年前までは、水揚げしたすぐその場で選別して箱に分けていたので、港の岸壁がハタハタの箱でいっぱいで足の踏み場もないくらいだったそうです。ハタハタが一番とれた時期は、中身の値段より当時入れていた木箱のほうが高かったくらい獲れたのだとか。往時のハタハタの漁獲量はそれだけ凄かったという話しです。
前日まで、ほとんど人を見かけなかった漁村だったのが、今朝は軽トラが行き交い、人々がわさわさしています。
港がどんどん活気づく光景は頼もしいものです。
その後、汽車(ディーゼル列車のことを、地方ではこう呼ぶこと多し)で秋田市内へ向かったのですが、車内のあまりの静寂ぶりと豊漁に沸く港の熱気とが対照的すぎて、港のあの喧騒は夢だったのかと現実感を失いそうになりました。
皆さんの胃袋を満たすべく、港は今すごいことになっているんだぞー!