「ジブラルタル海峡」。どこか冒険的な雰囲気がありませんか?そんな言葉から旅に駆り立てられるのもいいですね。ということで、今回はスペインの地中海岸のリゾート・マラガからモロッコへの旅をご紹介いたします。
住んでみたくなる町・マラガ
スペイン南部のビーチリゾートというイメージが強く、なかなか手の届かないと思っていました。が、行ってみて印象ががらりと変わりました。
この町もグラナダなどと同様にレコンキスタ以前はイスラム教徒が支配していました。地図で見るとアフリカ(モロッコ)がすぐ対岸あることがわかります。さらにそれ以前はローマ人、フェニキア人の植民地でした。大航海時代を経て今は外国人が住みやすい安全な港町として国内外からの観光客でにぎわっています。大昔から今にいたるまで、人々をひきつける魅力のある町なのです。
そんなマラガで一番気に入ったのは歩きやすさ。旧市街がこじんまりとまとまっていて、しかも明るく安全な町の雰囲気。移住者も多いらしく、英語を話せる医師もたくさんいると聞きました。街中にはちょいと入りたくなるカフェやバールがいっぱい。港周辺は公園に整備され、レストランが並んでいたり、ジョギングやサイクリングを楽しむ人々が行き交っています。主要な観光地を結ぶバスが町を巡回していて、乗り降り自由の1日券があり、これまた便利。町を見下ろすヒブラルファロ城山頂へも行ってくれます。
マラガといえば“ピカソ”
世界的巨匠ピカソはこの町で生まれ、10歳まで過ごしました。ピカソは早くから自分の生まれたこの町に美術館を作りたいと思っていたそうです。とある伯爵邸を改造して作られた美術館は旧市街の細い路地を進んでいった先にあります。奥まった場所にもかかわらず絶えずツーリストが訪れていました。ピカソの作品に加えて、地下にはフェニキア、ローマ時代の遺跡が見られます。幼少期を過ごした町の風景を眺めた前後に訪れるとまた違って見えるかもしれません。
イスラムの香り
今はカトリックの立派なカテドラルが見下ろすこの街は、8世紀にイスラム教徒に征服された後も貿易で繁栄します。その当時、海からの攻撃に備えるため作られたのがアルカサバ(要塞)。岩山を利用した城壁が町を守るように作られています。今も頑丈な岩城が海を見下ろしています。要塞の中にはイスラム文化の華・イスラム庭園などを見ることができます。
さらに、14世紀にはそのアルカスバを守るための要塞が出来上がります。それがヒブラルファロ城。いかに港の守りが重要で、かつ堅固であったことが伺い知れます。
スペインの歴史と文化が小さくまとまっている感じが、居心地のいい理由かもしれません。ぜひ1日ゆったりお過ごし下さい。
マラガからジブラルタル海峡へ
マラガを出ると海岸線に沿って快適な道を走ります。途中、石油開発で潤った町や世界の村祭りが行われる町、チベット仏塔が立ってる町などを眺めながらヨーロッパ最後の町を目指します。
ジブラルタル海峡の名前は711年この地に上陸したアラブ軍の将軍の名前にちなんでいます。今はイギリス領となっているジブラルタルの町を過ぎると、山の尾根伝いに風車が目に付きます。海峡を渡る風が強いことを証明しています。海の向こうにアフリカ大陸も見え始めます。いよいよ海峡越えです。
海峡近くの山頂には風車が並んでいました
ヨーロッパからアフリカ大陸へ
ヨーロッパ最後の町タリファはほんとうに小さな町でした。フェリー乗り場も国際線とは思えないほどこじんまりとして、この向こうにアフリカ大陸が横たわってるとは思えない気楽さがありました。とはいえ、やはり出国スタンプを押してもらうときは少し緊張します。
船には自分でスーツケースを転がして乗船します。船は大きくありませんが、いざ乗り込むと船の中は大きなガラス窓が配され、光が十分に入って明るく景色も眺められます。免税店もあります。カジノ代わりでしょうか、スロットマシーンなんかも置いてます。ついに、ユーラシア大陸に別れを告げ、船は波を残してアフリカの大地へと向かいます。モロッコの入国手続きは船上で済ませました。船外の景色を眺めながらイミグレーションの列に並ぶ光景はここならではでしょう。
1時間後、対岸にモスクが見えてきました。タンジェの町です。陽気な陽射しの中、小さな丘に作られた町には歓迎ムードがただよっていました。
タンジェ散策
タンジェの旧市街は丘の斜面に作られていました。街の入口には海に向けて残る砲台が・・・。静かな昼下がりに、この土地の重要性を思い出されました。しかし、待ち行く人の視線は決して厳しいものではなく、むしろ異国人に暖かい感じ。タンジェの第一印象はけっして悪いものではありませんでした。街の坂を上っていくと両側に店が立ち並び、白壁の建物を眺めてるだけではスペインやエーゲ海の海沿いの町とさほど違わない印象。ふと目に付いたモスクと、アラビア文字の看板が、「あ、アフリカに来たんだ」ということを実感させてくれました。さあ、ここからモロッコの旅がはじまるんだ。