第289話 コルワ ~聴聞者~ チベット医・アムチ小川の「ヒマラヤの宝探し」
「ディケ(この言葉を)、ダクギ(我が)、トゥーパ(聴いた 注1)、トゥ・チク(時)、ナ(場)。」 薬王城タナトゥク 八世紀に起源を有する『四部医典』はこの一節「我がこの言葉を聴いた時、場とは」で幕を開ける。法が成立するた […]
「ディケ(この言葉を)、ダクギ(我が)、トゥーパ(聴いた 注1)、トゥ・チク(時)、ナ(場)。」 薬王城タナトゥク 八世紀に起源を有する『四部医典』はこの一節「我がこの言葉を聴いた時、場とは」で幕を開ける。法が成立するた […]
残暑厳しい9月4日、薄着のまま店の駐車場へ出かけた。駐車場は店から約80m高低差30m離れたところにあるため管理を怠りがちになってしまう。なにしろ上田市で(当時)コロナのクラスターが発生しているために来客の気配すらない […]
日本におけるチベットのイメージは1904年に出版された河口慧海(1901~02、1913~15年チベットに滞在 第109話)の『チベット旅行記』によって形成されたといえる(注1)。慧海が出版した当時、具体的には日露戦争が […]
畑の脇に梅の木がある。85歳になる畑の所有者が生まれたときに植樹したというから梅も85歳だ。とはいえ50年近く放置されていたことから2016年、最初に出会ったときは葛の蔓が無数に絡みつき、隣の桑の木に圧倒されて梅の木かど […]
メンツィカンの薬草実習 チベット語で雨はチャルパという。チャルの原義は「生じる。昇る」で縁起のいい単語である。世界を見渡すと多雨の地域では雨は厄とされるが、チベットは少雨地帯なことから吉とされている。雨といえば2001年 […]
護法神 かつてチベット政府は決定しがたい国の大事などを定める際にセンディルと呼ばれる神託を用いてきた。別個の答えを書いた複数の紙を一つずつツァンパ(大麦粉)を練ったもの(セン 注1)のなかに丸めこんで(ディル)同じ大きさ […]
薬草実習 メンツィカン(チベット医学暦法大学 北インドのダラムサラ)では毎年8月になるとヒマラヤ山中にテントを張り、一カ月に渡って薬草を採り続ける過酷な実習が行われる(第1話)。この日はチャワというセリ科の薬草の採取を命 […]
ウリハダカエデ まだ手を入れていない森があった。そこは店舗から約500m離れた飛び地で、広さは40m×70mとなかなか広い。もとは畑だったが50年間放置されていたために樹木が生い茂っている。多い順に並べるとクヌギ、ヒノキ […]
メンツィカン(インド・ダラムサラ)同級生 チベット語でニョンパは狂人・変人という意味だが、人称語尾のパが抜けてニョンになると尊敬の念がこもり「学問(仏教)を極めた浮世離れした人」といった語彙になる。おおよそ肯定的な文脈で […]
チベット料理レストラン タシデレのモモ モモ、いわゆるチベット風の蒸し餃子にかけるチベット人の気合いは凄い。 たとえば過酷なヒマラヤ薬草実習の最終日の御馳走はモモと決まっていた。その日だけはモモ作りのために学生が5、6 […]
コロナウイルスの感染拡大に伴い「チベット医学ではどのように対処しますか」と期待を込めて質問される機会が多い。そこで今回はチベットにおける伝染病の歴史について整理しておきたい。 八世紀に編纂された『四部医典』には伝染病にあ […]
夏になるとヒマラヤの山々を駆けめぐりひたすら薬の原料となる薬草を採取した(第1話)。学生寮ではひたすらメンツィカン(チベット医学暦法大学)の学友たちと朝から晩まで苦楽をともにした(第169話)。卒業試験では60名近いチベ […]