チベット仏教の最大宗派であるゲルク派の総本山、ガンデン(甘丹)寺。ガンデンとはチベット語で弥勒菩薩の住まう「兜率天(サンスクリット語でトゥシタ)」のこと。ゲルク派の開祖・ツォンカパによって1409年に建立されました。
ツォンカパは、現在の青海省(西寧のタール寺の近郊)に生まれ、当時の堕落していた仏教界を改革し、戒律を重視するゲルク派を興した大学僧です。1419年には、このガンデン寺で入寂しています。その後、17世紀にはこのゲルク派がモンゴルの軍閥と結びつき、ダライ・ラマ法王を中心とする聖俗一致の政権を確立しました。ガンデン寺はゲルク派の総本山として隆盛を極め、最盛期には3,000人とも7,000人ともいわれる僧侶が学ぶ大僧院でした。ゲルク派は現在でもチベット最大の宗派。その総本山であり、開祖の最期の地であるガンデン寺はチベット人にとってとても神聖な場所なのです。
ラサには、ガンデン寺と並んで「ゲルク派のラサ3大僧院」に数えられるセラ(色拉)寺、デプン(哲蚌)寺などの歴史ある大僧院がありますが、近年ラサでは開発が進んで街がどんどん拡大しているため、もともと街の郊外にあったはずのそれらの僧院は、すっかりラサの街の中に取り込まれてしまいました。
一方、ガンデン寺はラサ市内からは車で約2時間弱ほどかかる郊外に位置しています。標高4,300mの「丘」の上に建っていて、僧院と丘が一体となり、聖地ムードは満点です。麓からガンデン寺に続く九十九折の山道を登って行き、丘の斜面にへばり付くように建っているその姿が見えてくると、威風堂々とした佇まいに圧倒されることでしょう。ラサ市内のように空気中に余計な物質がないので空気もとても澄んでいて、正に総本山にふさわしい聖なる場所といえるでしょう。
パワースポットで絶景ハイキング
ガンデン寺は、ゲルク派の総本山として文化大革命で徹底的に破壊され、建物や仏像などは最近再建された新しいもの。「古いからありがたい」というわけではないが、「ワビ・サビ」好きな日本人としては、罰当たりだがちょっと有り難味に欠けます。
しかし、そんなガンデンでお勧めなのが巡礼路のハイキング。寺の周囲には、1周1時間ほどで歩ける巡礼路があり、ラサのみならず全国各地から巡礼者がお参りにやってきます。標高4,300mの丘の上にある巡礼路は、とにかく景色がすばらしく、眼下にはキチュ川が静かに流れ、その周りに農村や麦畑が広がり、その奥には山々がはるか向こうまで連なります。巡礼路にはツォンカパが瞑想した洞窟や、ツォンカパがここから山の中をすり抜けて僧院まで行ったとされる岩の割れ目など、チベット仏教徒にとって有り難いパワースポットもたくさんあります。
しかもこのハイキングには特別な装備や技術、体力は必要ないので、気軽にその絶景が楽しめます(スニーカー程度の歩きやすい靴と、雨期はレインコートは必要)。一部足場の悪い箇所もあるが、ほぼ歩きやすく整備されており、アップダウンはほとんどありません。
ちょっと足場の悪いところも
このガンデン寺を訪れるのに特にお勧めの季節は、7月~8月の夏。丘が一面の緑で覆われ、さらにブルーポピーなどの高山植物があちこちに咲き誇ります。普通、ブルーポピーを見に行くとなると4,000m級の山へのトレッキングが必須だが、この巡礼路を歩けば、絶景の中でフラワーハイキングが手軽に楽しめてしまいます。
幻の花と呼ばれるブルーポピー
幻の花と呼ばれるブルーポピー
シルクの大タンカが開帳されるセタン祭
また、毎年チベット暦の6月15日にはセタン祭というお祭が行われる(西暦では日付が毎年異なるが7月中旬~8月初旬)。本堂の中にはシルクで作られた貴重なタンカ(仏画)が、本堂の前面には巨大なタンカが開帳され、多くの巡礼者でにぎわいます。その熱気からはチベット人の熱き信仰心が肌で感じ取れるはずです。
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風の旅行社ではこのお祭を見学するツアーを毎年設定しており、ご都合が合えばとてもお勧めのツアーです。もちろん、祭りを見学した後は、たくさんのチベット人巡礼者と一緒に巡礼路のハイキングも楽しみます。
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