コース名:青蔵鉄道で行くラサ 8日間 <ショトゥン祭スペシャル>
2012年8月12日〜19日 文●池内明穂
夏のチベットは、祭が盛りだくさん!
日常の販売業務の中で、検討中のお客様から「チベットはいつがお勧めですか?」という質問や相談を度々受けます。それぞれの季節の特徴やマイナス面も含めてお伝えしていますが、「夏の時期は祭も各地で開催されていますし、それぞれの地域やお寺で独特の息吹が感じられますよ」と案内をすることがあります。
今回訪れたショトゥン以外にも、ガンデン寺のセタン祭、アムド地方のルロ祭、ラサ郊外の洞窟で行われるイェルパ・ツェチュ祭など、夏のチベットは各地でお祭が開催され、賑わいをみせています。見るだけで功徳が積める巨大なタンカの開帳や、チベット仏教の教えを具現化した仮面舞踏チャム、華やかな衣装の女性と仮面を被った男性が舞うチベット歌劇アチェ・ラモなど、祭によって様々な楽しみ方があるのです。(チベットの祭についてはこちらへ)
チベット文化圏に限らず、「祭」はその土地の宗教や人々の信仰心、文化が凝縮され、地元の人々にとっては、更に土地の人々同士の繋がりも実感できるものだと思います。そして観光客にとっても、(たとえその祭が、自身が信仰する宗教以外のものであっても)その空間にお邪魔させていただくことで、その土地や神仏に対して、その信者に対しても、感謝の念と、清らかな気持が心に宿るのではないでしょうか。
ショトゥンってどんなお祭?
今回のツアーで訪れたデプン寺のショトゥン祭。チベット語で「ショ」はヨーグルト、「トゥン」は宴を指し、チベットの最大のお祭りとしてその名は広く知れ渡っています。チベット仏教という日本では馴染みの薄い宗教の夏の行事の一つですが、「ヨーグルト祭」とも呼ばれ、かつて夏の一定期間、寺の境内に閉じこもるヤルネ(夏安居)という修業を終えた修行僧に、村人達がヨーグルトを施したことが起源といわれています。
またチベット仏教圏では、仏や菩薩、神々の姿、また曼荼羅などが描かれている「タンカ」と呼ばれる仏画を度々目にする機会がありますが、このショトゥン祭では、なんと高さ30m、幅20mという巨大なタンカが開帳されるのです。私達がお土産屋さんなどで目にするタンカは、日本でいうところの掛け軸タイプの大きさが多いのですが、デプン寺の巨大タンカは100人以上の僧侶が運び岩山に掲げる、というのですから、まずその大きさに驚かされます。更にこのタンカは見るだけで、「悟りの種を得る」と言われており、巡礼者はもちろん、多くの観光客もデプン寺を訪れているのです。
過去のショトン祭の様子
タンカを担ぐ僧侶たち
(2004年の様子)
タンカに触れ功徳を得ようとする人々
(2005年の様子)
ただ、今回現地スタッフは「入場ゲート前は例年にないほどの混雑ぶりだった」と言い、また参加者の皆さまも、はぐれないよう、人混みでつぶされないよう必死でした。私自身も、人の波に流され、自分の意思で身動きが取れない怖さも感じました。幸いにして、皆さまと無事に戻ってくることができましたが、それほどまでに、今回のショトゥン祭では、タンカ台までの道のりが長かったのです。
当日はこんな感じでした。
▼ ホテル出発
早朝4時頃、ホテル出発し、弊社ツアー参加28名(3つのグループ)と、スタッフで市内の西に位置するデプン寺に向かいました。お寺近くの道路には警備官が等間隔に配置され、更に参門前にはセキュリティチェックのゲートも設置されていました。まだ夜空に星が瞬いている中、山道をゆっくり進み茶館を目指します。
▼ 茶館で休憩
軽食はこんな感じです
事前にスタッフが席を確保してくれていた、チべタンが集う茶館で、しばし休憩です。あったかいミルクティを飲み、スタッフが準備してくれた軽食(お菓子やバナナ)などを食べながら出発に備えます。ヨーグルトも配られました!
▼ 茶館を出て、タンカ台へ
広場では、タンカ台に進むためのゲートの開門を待ちました。私の隣にいた巡礼者の方からも、ウキウキと興奮している様子が伝わります。警備隊も安全確保や統制にあたっていますが、しばらくすると、開門を待ちきれなくなった人々の波が、ゲート方向ではなく、広場脇の石段へと向かっていっています。そして肩の位置ほどの高さの、その段によじ登っているのです。一時、警備隊の統制が難しくなり、私達も人の波の中で、脇へと押され流されていきました。(人に圧迫された中、かなり怖かったです…)
たどり着いた所では、巡礼者が上から手を引っ張ってくれたり、下から足を支えてくれたりと助けてくれて、私達もよじ登ることができました。チベット仏教でいうところの「利他」の精神なのでしょうか。その空間には、無事人混みから脱出できた安堵感と、参拝者同士の一体感のような空気を感じました。
ゲート前の人ごみ この中にいました
タンカ台へと進みます
▼ タンカを拝む
満員電車の中にいるような状態で、一歩一歩足を進めていくと、ようやくタンカが見えてきました! 見上げる高さのタンカは言葉を失うほどの大きさです。僧侶が一段高い台の上で、信者の寄進するお布施やカタを受け取っています。到着した方からお参りをし、茶館へ戻りました。私も、この場に皆さまと来ることができたことに感謝し、タンカ台を後にしました。
タンカが見えてきました
タンカ台の前にて
デプン寺裏の巡礼路からタンカを望む
▼ 帰路へ
ツアー参加者全員(28名)の無事を確認し、ほっと一安心です。しばし茶館で休憩の後、草むらの道を歩いて大通りへ向かいました。・・・お疲れ様でした!!
お茶屋さん外の風景(私達は建物の2階で休憩しました)
ヨーグルトを食べるガイドのダワ・ツェリン(左)、ダジュン(右)
最後に・・・
今から20年程前からスタートした、風のショトゥンツアー。当時は、現在のように政府が公に宣伝をしているわけではなく、インターネットなどの通信手段も発達してない環境で観光客はほとんどいなかったようです。また「祭」という宗教行事は概して外部の人間には伝わりづらい性質があり、おそらく他の日本の旅行会社はまだ手がけていなかったと聞いています。そのような時からツアーを発信してきましたが、「ショトゥンの魅力を伝えたい」という熱い思いは、20年経った今も変わりません。
今では夏のチベットツアーの目玉ともなりましたが、何よりも現地スタッフの入念な情報収集、そして長年培ってきた経験、当日のバックアップ体制があってこそだと、訪れてみて改めて感じました。
手を合わせるお客様
私達の旅の目的の一つでもあったこのショトゥン祭。人混みは想像以上で大変でしたが、人々の熱気と深い信仰心が伝わり、圧倒されるような独特の空気が流れる中、岩山に掲げられた巨大なタンカを目にするだけでも、参加者の皆さまには、「来てよかった!」と心から思ってもらえたと思います。
後で聞いた話ですが、チベットリピーターお客様から「チベットは何回も来ているけれど、実際にこの目で見ることができて本当に感動した」と少し涙ぐんでおっしゃっていた様子も忘れられません。
今回は幸いにしてツアー参加者全員、怪我もなく戻って来ることができましたが、来年以降は参加される皆様の安全を第一に考え、専門店として対策を講じていかなければと、強く感じています。駐在員や企画スタッフ、現地スタッフとも話し合いを重ね、今後もチベットツアーを発信していきます。皆さん、来年の夏、そしてチベットのお祭ツアーをどうぞご期待ください!!
2016年3月追記:
安全面に配慮して、デプン寺のショトゥン祭のツアーが帰ってきました。詳細は下記をご覧下さい。
ラサから旅の最新情報 デプン寺の改修(ショトゥン祭に向けて)
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