ウズベクの聖なるハンマム 1

遅ればせながら夏休みをいただきまして、念願のウズベキスタン旅行をしてきました。

ウズベキスタンは、家の中では靴を脱ぐ、緑茶を飲む、お年寄りを尊敬する、こたつに入る、などなど、日本はよく似た文化を持つ国ですが、お風呂に入る習慣も昔からあったようです。

各家庭にシャワー施設が出来る前までは、ウズベキスタンでは公衆浴場ハンマム(ハマム)に出かけることが普通だったとか。

そこで、かねてから気になっていたブハラの女性専用ハンマムにいってきましたので、実際の様子を紹介させていただきます。

いざハンマムへ

そのハンマムはカラーン・モスクの裏手にある閑静な住宅地を進んだところにひっそりとたたずんでいます。

扉をくぐると右手の暗がりに小さな通路と扉があります。ほんとに営業してるのかな?とおそるおそる扉を開けば受付と脱衣所を兼ねた広間と、受付嬢(おばちゃん)のきさくな対応とすてきな笑顔が待っていました。
もし汚かったり嫌な感じがしたらやめようと、下見のつもりで行ったものの、床に敷かれた絨毯や柱や壁の古びた感じや天窓からの光がとても心地好く、わたしはその全体的な「感じ」がいっぺんで気に入ってしまいました。とりわけ、受付おばちゃんの声を好きになりました。

聞くところによると、このハンマムは16世紀頃の建物で、ブハラ王の奥さんも通っていた場所なのだそうです。お客さんの一人が「とっても気持ちいいからあんたも入りなさいっ、ほんと気持ち良いから! それにこのハンマムで体をきれいにすると願いがなんでも叶っちゃうのよ!」とまくしたてています。まっさか〜と思い、本当ですかねえ?とガイドさんにそんなわけないですよねという意味を含めて尋ねてみると、予想外にも彼女は言いました。

「ええ、聖なる場所ですから。本当に願いごとが叶うと思います」

ともかく、日のあるうちに街を巡りたかったので、料金と閉店(閉館?)時間を確認し、夕方にまた来ますと行ってその場をあとにしました。

さて、約束の夕方になりました。
少し遅い時間になってしまいましたが、おばちゃんは帰り支度もせずに待っていてくれました。服や荷物をロッカーに入れて裸になると、おばちゃんが鍵をかけてくれます。おばちゃんに手を引かれて、いよいよ奥の扉をくぐりました。熱い空気に包まれます。
壁と床はすべて石で出来ていて中には照明がありません。天窓はありますが、日は暮れかかっていたので薄暗くなっていました。

まず薄暗い廊下を通ってヘアピンカーブを曲がると円い部屋になっており、そこに天窓と八角形の石の台座がありました。その部屋をぐるりと囲むようにして7つの部屋がくっついています。7つの部屋はすべてサウナになっていて、それぞれ温度が違います。1番ぬるい部屋から入って順番に自分のペースで移動していくのです。

中で待っていたあかすり専門のおばちゃんに手を引かれ、はじめのぬるい部屋に入りました。おばちゃんはここに座って、言うと、部屋から出て行ってしまいました。ドーム型の天井に、ここでも明かり取り用の小さな窓が付いています。他にお客さんは一人もおらず、仄暗い中で一人きりになってしまいましたが、特に怖い感じはしません。寧ろ、自分だけの特別な空間にさえ思えます。程なくしてあかすりおばちゃんが戻ってきて蝋燭に火を灯しました。
ブハラ王の奥さんもこのような光景を目にしたでしょうか。(⇒続く


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