ミャンマー旅行の楽しみ方 ~ファウンドーウーパゴダのいかだ祭り編~

インダー族・男の祭り
インダー族・男の祭り



朝けたたましいドラの音で目覚めた。

湖の中に建つ高床式の部屋から外を見ると、目の前をむかでのように足だらけの船が、ドラの音とともに通りすぎていく。

「お祭りのプロセッション(大行列)の練習よ」

ホテルのオーナーが教えてくれた。

そう、この祭りを見に来たのだ。


神秘の湖・インレー湖

湖上の民インダー族の子どもたちは小さいころから船を操っている

湖上の民インダー族の子どもたちは
小さいころから船を操っている

ミャンマー東部、タイ国境に近いシャン州の湖・インレー湖。この湖周辺に暮らすインダー族は、独特の方法でボートを操り漁をすることで知られています。ボートの縁に片足で立ち、もう片方の足に櫓を絡めて、自分の足の付け根あたりを支点にして、脇や片手でその端を操作するだけで器用に船を操り、残った片手で網を打つのです。朝もやの中、静まり帰った水面に網を打つ姿は幻想的で芸術的。


ファウンドーウーパゴダのいかだ祭り

湖の真ん中にある水上寺院ファウンドーウーパゴダのご本尊(仏像)を船に積み込んで、18日間かけて、湖に沿って点在する20の村々を巡るお祭りです。村に着いた仏像は手厚く寺院に迎えられ、村内外から集まった人々の歓迎を受け、信者たちに金箔を貼り付けられます。これがお賽銭のようなもの。おかげでご本尊は首や腰のくびれは皆無、ずん胴どころか、だるまさんのようになってしまっています。それでも彼らは金箔を貼るのが徳を積むことになると思い、取り付かれたように金箔を貼っては祈っています。


※残念なことにご本尊に金箔を貼り付けることが出来るのは男性のみ。女性は少し遠巻きに、手を合わせて祈っています。ミャンマーの寺院ではところにより、今も女人禁制の場所が存在しています。


四体しか運ばないワケ

信心深い周辺の村人から、わが村でもご本尊を拝みたいという切なる思いを満たすため始まったのでしょう。この寺院のご本尊は五体の仏像。お祭りでは、最初五体全部を船に乗せて村をめぐっていたそうですが、ある年、嵐に会い、巡航の途中でご本尊五体が船から水中へ落下。その内四体は見つかったのですが、最後の一体は最後まで見つからず、あきらめていたところ何日か後に、ファウンドーウーパゴダのすぐそばで発見されたとか。それからというもの、最後の一体だけは持ち出さず、本堂に残し、あとの四体だけで村々を回るようになったそうです。

ファウンドーウーパゴダの不思議な力で仏様は遠く離れたところから引き寄せられたと思われてるようです。それだけ信仰されている寺院ということですね。



この祭りがすごいワケ

祭りでは、四体の仏像をカラウェイ(伝説上の鳥)をかたどった船に載せ、それを一隻の案内船が曳航します。その前を、2列縦隊で50人~100人くらいの漕ぎ手が立ち漕ぎをしている船が曳航しています。そして、そのような立ち漕ぎ船が何十隻もロープでつながれてその前に連なっているのです。湖上では優雅に進むこともあれば、荒々しく波を蹴立て針路を大きく曲げることもあります。湖上を舞台にした壮大なだんじり祭り、まさに男の祭りです。100人の漕ぎ手が息を合せて船を漕ぐ様は、まるでひとつの生命体のようです。今朝見た「むかで」はその内の一隻が練習している光景だったのです。



海の民インダー族の誇り

カラウェイに載せられたご本尊を一目見ようと、また村の若者の家族がわが子の晴れ姿を一目見ようと周辺の村人もボートに分乗して船隊を追いかけます。途中休憩が入ると村の船に補給部隊が漕ぎ寄って、食料や飲み物の差し入れをしている姿はほのぼのとして、それでいて、ご本尊を曳航しているという喜びのようなものがひしひしと伝わってくるのです。

インダー族はもともと、南の海岸地方(ダウェー)に住んでいたそうです。戦のためバガンの王にこの地に連れてこられてからも水の民として暮らしています。この祭りに掛ける男たちの意気込みはかつて海の民としての誇りを呼び覚まそうとしているかのようでした。



おまけのボートレース

18日間続くお祭りの中で2日だけ特別な日があります。中日に近いニャウンシュエに到着する日と最後ファウンドーウーパゴダに戻ってくる日です。この日だけカラウェイ到着後、盛大なボートレースが行なわれるのです。男女数チームがその速さを競います。なかなかの迫力です。

しかし、ご本尊の曳航の中の大船隊にはかないません。