日本でも多く目にするインド料理屋さん。そこで働いているスタッフはネパール人が多いことをご存知の方もいらっしゃると思います。しかし、インド料理=ネパール料理だと思ったら大間違い。案外知られていないネパールの食事情をご紹介いたします。
まずはカトマンズ在住の平均的なネパール人の一日を覗いてみましょう。
- 起床 5:00~7:00頃
- チャーを飲んで一日が始まります。お母さんは早速朝ごはんの支度。この時間、朝のバザールやプジャ(礼拝)に出かける人も。朝シャワーを浴びる人も多いです。
- 遅い朝食 10:00頃
- ダルバート・タルカリを食べます。会社勤めの人がいる家庭では、もっと早い時間にパンと卵で朝食を済ませます。その後は、家の掃除をしたり、洗濯(ほとんどの家庭では手洗い)など。
- 軽食 15:00頃
- カジャと呼ばれる軽食を食べる習慣があります。たいがいはモモかチウラとチャー。「ミトツァ!」(美味しい!)。その後、買出しがあれば夕方のバザールや町のスーパーへ。
- 夕食 19:00~21:00頃
- だいたい19:00には仕事や学校から家族が帰ってきます。夕食のメインはやっぱりダルバート。タルカリの具や味付けを変えたり、カレーが加わることも。後は家族揃って談笑したり…。
- 就寝 19:00~23:00頃
- 「スバラットリー」(お休みなさい)。ZZZZZZZ…
上記のように、ネパールの食生活は「一日ニ食+オヤツ&お茶」が基本。日本人がご飯と味噌汁を食べるように、主食(カナ)はほとんど毎日ダルバート・タルカリです。
ダルバート・タルカリ
ダル=豆、バート=ご飯、タルカリ=付け合せのおかず。その名の通り、豆とご飯をメインにした栄養バランスの取れたネパール定食です。一般家庭では動物性タンパク質を使わないシンプルなダルバートが多いですが、レストランの豪華版だとチキンや魚、羊、山羊、干したヤク肉などのカレーが加わる事もあります。
日本のインド料理屋さんでは、主食としてナンが出される事が多いと思いますが、こちらの代表的な主食は「米」。ほとんどのダルバートには粒が長くサラサラした食感のインディカ米が使われます。ネパールでも小麦粉や蕎麦粉で作ったロティというパンケーキを食べることがありますが、インド系の住民が多い南部のタライ地方を除き、窯焼きのナンが登場するのは非常に稀なことなのです。
ひよこ豆やレンズ豆を煮込んだ塩味のスープをご飯にかけていただきますが、カレーとは違い、ダルスープ自体は全く辛くありません。アチャールと呼ばれる漬け物(トマトペーストを使ったりする。多くは辛い。)や、料理法や味付けが多種多様なタルカリというおかずを混ぜることによって、渾然たる味のハーモニーを楽しめるという点が特徴です。
提供される場所によって味が異なるので、何度食べても飽きることはないでしょう。
<盛り付け方>
真鍮製のプレートで召し上がれ。ダルスープやタルカリを別々の小皿に盛り付ける場合もあります。ネパール人は右手を使って食べますが、ちゃんとスプーンやフォークも用意してくれますのでご安心を。
<タルカリの種類>
チンゲン菜やカリフラワー、ジャガイモなどのほか、小粒で辛い生トウガラシや、グンドゥルックと呼ばれる発酵食品、ダイコンやニンジンなどの生野菜や、パパドという豆の煎餅を付け合わせることもあります。
<スパイス(マサラ)>
チキンマサラ、マッシュルームマサラなど、使用目的に合わせてブレンドされたスパイスがバザールやスーパーで販売されています。各家庭では、石のすりこぎを使って新鮮なスパイスを調合することも。
ネパール人の食生活
その日のものはその日のうちに!
首都カトマンズでは、大抵の物はスーパーなどで揃いますが、路地裏の青空野菜市場は健在です。小さな市場には近場で採れたものが売られていることが多く、ズラッと並べられた野菜を見ると、周辺の畑でどんなものが採れるのかがわかります。ブロッコリー、ナス、キュウリ、ほうれんそう・・・。日本の奄美大島と同じ緯度に位置するネパールは、思いのほか暖かく、日本の夏野菜も並んでいるのには驚きます。
庶民の生活においては冷蔵庫の普及もまだまだ少なく、その日に食べるものを買うというのが基本の生活なので、基本的に葉物はその日に使い切ってしまいます。野菜の重さを計るのは昔ながらの天秤! 「今はホウレンソウがおいしいよ!」「もうすぐお祭りだから、そろそろ山芋も買わなくちゃね」そんなやりとりが聞こえてきます。
水牛や魚は食べる? 食べない?
野菜市場が人々でにぎわいを見せる中、肉と魚を並べるお店では、なんだか人影もまばら。なぜなら、ネパールの一般家庭の多くは、肉や魚は日常的に食べているわけではありません。ネパールで食べられている肉の種類は、一般的に水牛、ヤギ、鶏の3種類(牛は食べない、豚を食べる人は限られている)。
ネパールのヒンドゥー教徒は雄牛は神聖な動物として絶対に食べませんが、水牛は食べます。肉の中でも最もご馳走といわれているのがチキンで、お祭りや来客のもてなしの料理としてチキンカレーがよく出されます。もちろん、食べるものは宗教によっても異なり、まったく肉を食べない人々もいます。また、ネパールには海がないので、魚は食べないかと思いきや、コイなどの川魚は食卓に出てきます。しかし、基本的に白身で淡白なものが多いので、たいてい揚げ物料理として食べられることが多いようです。
豪快に切り分けるのがネパール流!
野菜ならまだしも、ネパールでは魚でも肉でも丸ごとそのままの状態で陳列されていたり、路地裏の片隅で解体している様子も日常茶飯事。もちろん骨はついたままで、日本のように事細かく肉の部位を指定することもできません。日本のスーパーでしか肉を買ったことがない日本人には、「おぉ!」と唸ってしまうほど豪快に並べられた肉や魚たちを見ていると、「命をいただく」という意味を改めて考えさせられます。
素焼きのカップを使い捨てる理由
カトマンズの旧王宮広場周辺の路地裏を抜けると、そこは素焼き物がズラッと並べられた陶器屋街。この陶器はお祈り用のろうそくや、食べ物を入れるカップ(容器)として使われているものです。これらが、はたして地面にまっすぐ立つかどうかもあやしいほど曲がっていたりするのはご愛嬌。
実はネパールでは、同じカップを用いるわけにいかないという浄不浄の観念による習慣があり、素焼きのカップは再利用はせず、一回ぽっきりの使い切りです。使用後は地面にたたきつけて割り、元の土へと帰っていくのです。
ネパールのレストラン
ネパールの首都カトマンズには、実に様々なレストランがあります。
チベット/中国から伝わったギャコック(チベット鍋)やモモ(蒸し餃子)、トゥクパ(チベット風うどん)やチョウメン(焼きソバ)。インド料理屋ではカレーやナン、サモサなどがポピュラーです。その他、焼肉やビビンバなどの韓国料理や、水牛から作られたチーズを使ったピザやパスタなどのイタリア料理店etc…。カトマンズでは世界中の味を楽しめると言って過言ではありません。
スーパーのフードコートにはハンバーガーやフライドチキンなどの外資系ファストフードが軒を連ねており、最近ではモモ屋さんもチェーン化するところが出てきました。キャッチコピーはどこかで聞いたことのある“chito mitho sasto(早い・旨い・安い)”だったりします。
また、実はカトマンズはバックパッカーに知られた日本食大国でもあります。絆、ふる里、一番、古都、桃太郎など、名前から和風なレストラン沢山がありますが、いずれも日本人が経営に関わっていたり、日本留学から帰国したネパール人がレストランを開いたりする事が多いため、かなりレベルの高い日本の味を楽しむことができます。
<カジャ(軽食)>
ネパールでは基本的に朝・夕だけの2食ですが、昼過ぎにカジャと呼ばれる軽食を食べる人が多いです。特にカトマンズに多く暮らすネワール族が作るチャタマリ(ネパールのピザ)やバラ(豆のパンケーキ)、チウラ(薄い干飯)などが有名です。
<チャー(お茶)>
紅茶の産地で有名なダージリンはインド領ですが、すぐ隣のイラムという所で採れたネパールティーも絶品です。ネパール人は甘いマサラチャを飲むことが多いですが、カロチャ(黒いお茶)と呼ばれるストレートティーを好む人もいます。
<アルコール>
好きな方は食事と切っても切れない「アルコール」。もちろん、ネパールでも多様なお酒を楽しめます。ビールは比較的高級ですが、チャン(どぶろく)やロキシー(焼酎)、ネパール産のラム酒などは手頃な価格でバッチリ酔っぱらえます。
風の旅行社の「味」
風の旅行社のネパールツアーでは、食事のご希望も柔軟に対応いたします。個人では躊躇してしまうようなローカル食堂や、大人数のグループツアーではまず行かない秘密の名店など、ネパール支店の日本語ガイドと一緒にチャレンジしてみてはいかがでしょうか? 概して、美味しいお店はガイドブックには載っていないものです。
また、古都カトマンズのヘリテージホテル「風ダルバール・カマルポカリ」、雄大なヒマラヤ・アンナプルナ山群を望むポカラ近郊の山村に建つ直営ロッジ「つきのいえ」、提携リゾート「はなのいえ」では、下記のようなコンセプトで食事をご提供しています。
<風ダルバール・カマルポカリ>
系列ホテル「風ダルバール・カマルポカリ」では、ネパール料理はもちろん、有機野菜を使った日本料理、西洋料理、中華料理などバラエティー豊かなメニューをご用意しております。また、自家製のケーキや、オーガニックコーヒーも好評です。
<つきのいえ>
一般的なトレッキングルートにあるロッジとは違い、「つきのいえ」に決まったメニューはありません。その時に一番おいしい地元の食材を使い、スタッフが得意なネパール家庭料理を心を込めてお出ししています。地酒のロキシーは飲み放題です。
<はなのいえ>
「はなのいえ」の敷地4ヘクタールのうち、3ヘクタールが農場です。野菜や雑穀、はちみつ、ミルク、バター、ジャムなど、ここで作られた食べ物をふんだんに使い、素材本来の味を楽しんでいただける日本食をご提供しています。
多民族国家であるネパールでは、場所場所によって多彩な食文化に出会えます。生水や生野菜には十分お気をつけいただき、自分だけのグルメマップを作ってくださいね。