1年に1度、桜の季節のほんのわずかな期間のみ現われるギフチョウ。その華麗な姿から別名「春の女神」と呼ばれています。カタクリ、スミレ、ショウジョウバカマ、サクラなど早春の花を求めて可憐に舞い飛びます。
ギフチョウはアゲハチョウ科で、氷河期の生き残りと言われる原始的なチョウの仲間です。近縁種は中国や朝鮮半島に分布していますが、Luehdorfia japonicaという学名の通り日本特産種です。岐阜県で最初に発見されたためギフチョウ(岐阜蝶)という和名が付けられました。
早春に羽化するギフチョウ。その成虫が生んだ卵は孵化するとカンアオイなどの食草を食べ、夏には蛹になります。蛹はすぐに羽化することなく、そのまま翌年の春まで休眠します。まだ肌寒い時期に発生して活動するためなのか体が温かそうなフワフワの毛で覆われているのも特徴です。
交尾するとオスはメスの腹部に他のオスが交尾出来ないように黒い板のような受胎嚢(交尾板)を付けます。その形状は非常に独特なので現地で確認してみたいと思います。
黄、黒、橙、赤、青の五色に飾られた一見派手に見えるギフチョウですが、翅が黄色と黒のだんだら模様をしているため、枯れ草の上に止まると見事にその背景に溶け込んでしまいます。この姿から昔は「だんだらちょう」と呼ばれていたこともありました。
北は山形県北部、鳥海山麓から新潟県、長野県と神奈川県の一部、石川県及び静岡県から西へほぼ連続的に山口県まで分布しています。現地ではギフチョウの生態や行動、生息する環境を中心に解説いたします。
小高い山や山沿いの雑木林、樹木が密集していない林床に適度な陽の光が入ってくる所にギフチョウは生息しています。このような場所は最も開発されやすい所でもあります。近年、鹿による食草の食害が深刻な問題になっており、急速にギフチョウが姿を消しています。そんな中でも新潟ではギフチョウが生息している場所がまだたくさん残っています。しかし、かつての多産地が絶滅産地になってしまったようにいつ姿が見られなくなるか分かりません。生息環境が残っていれば将来にわたりギフチョウをたくさん見ることが出来ます。このことをより多くの方に知っていただきたいという思いで、本観察会を企画いたしました。
観察が期待できる昆虫(可能性が高い順)
ギフチョウ、ミヤマセセリ、キアゲハ、ナミアゲハ、ビロードツリアブ、ハナアブ、ルリシジミ、ヒオドシチョウ、シリアゲムシ、アカハネムシ、コツバメ、ミヤマカラスアゲハなど。
当講座では、講師の解説が良く聞こえるようイヤホンガイドを使用いたします(使用料は講座代金に含まれます)。イヤホンガイドとは、話し手が所持する送信機を通じて、複数の受信機へ音声を届けるツールです。