~奥会津・只見町でアムチ小川さんと渡部さんに学ぶ、薬草の旅~
アムチ小川さんと福島・只見町に生薬として芍薬を育てている渡部和子さんを訪ね、芍薬などの薬草を学ぶ旅です。
小川さんより
今回のテーマは芍薬。登山時に足の痙攣に効く特効薬(ツムラ68番)は芍薬甘草湯。婦人病の妙薬といえば当帰芍薬散。風邪の引きはじめに服用する葛根湯にも芍薬は配合されています。その有効成分はペオニフロリンであると解析されています。さらには芍薬だけにとどまらず、そこから広がる薬草、歴史、民俗学、大自然の世界へとみなさんをご案内します。舞台は奥会津の只見。奥深い山里には古代から受け継がれている「智慧」がひっそりと息づいているかもしれません。
5年前の二月、講演会の御誘いをうけて雪深い只見を訪れ、地元の人たちと夜遅くまで語りあいました。そして今回は秋の只見をみなさんと訪れたいと思います。紅葉にはまだ早い季節ですが、只見の大自然を満喫し、地元の人たちと触れあい、民間医療だけにとどまらず、只見に伝わる「生きる知恵」について学びます。
〜只見の昔話です〜
今から56年前の11月の連休に、奥会津只見町の名峰、会津朝日岳を登りにいきました。紅葉真っ盛りの時期で、イワナが川岸で産卵する姿を見つけ、林の中のブナの切り株にびっしりと生えているナメコも採ることができ、今でも鮮やかに映像として想いだせる原体験でした。2泊3日の山行(ルート開拓)でしたが、3日目の夕方には持参したレーション(食料)が尽き、登山口の白沢にやっとの思いで辿り着いた時、小さな雑貨さんを見つけ、なにか食べ物を買おうとしてお店に入ると、母親くらいの年ごろのおばさんが「どこから来たの?」と薄汚い登山着すがたの僕たちに聞いてくれました。会津朝日から下山したことを告げると「今、キノコご飯を炊いたから、食べていきなさい」と誘っていただきました。たっぷりと頂いた後「泊まっていきなさい」と、僕たちのことを見透かすように云ってくれました。仏間で泊めていただいたのですが、仏壇には軍帽を被った若い男性の写真が飾られていました。そういえば、おばさん一人きりの家でした。
その後、なんのお礼もできずに十数年ほど前、白沢を訪ねたのですが、そのお店はどこにも見つけることができませんでした。それだけが只見での唯一の気がかりです。
奥会津の只見は、日本一、いや世界一自然の美しい場所だと、今でも思っています。
風の旅行社 水野 記
東洋と西洋の医学を薬学で結ぶ情熱の薬剤師
小川 康 (おがわ やすし)
富山県出身。1970年生まれ。「森のくすり塾」主宰。東北大学薬学部卒。薬剤師。元長野県自然観察インストラクター。薬草会社、薬局、農場、ボランティア団体などに勤務後、 99年1月よりインド・ダラムサラにてチベット語・医学の勉強に取り組む。2001年5月、メンツィカン(チベット医学暦法学大学)にチベット圏以外の外国人としては初めて合格し、2007年卒業。晴れてチベット医(アムチ)となる。チベットの歌や踊りにも造詣が深い。2009年7月小諸に富山の配置薬を扱う「小川アムチ薬房」開店。(現在は「森のくすり塾」に改称、長野県上田市野倉に移転、開業)2015年3月、早稲田大学文学学術院を卒業。修士論文のテーマは「薬教育に関する総合的研究」 著書:『僕は日本でたったひとりのチベット医になった ヒマラヤの薬草が教えてくれたこと』(径書房)『チベット、薬草の旅』(森のくすり出版)
『チベット医・アムチ小川の「ヒマラヤの宝探し」』を風の旅行社社サイト内で連載中。