第3回は「奈良盆地・ヤマト」です。
2022年、「古事記の神々をめぐる旅」は、「イザナミとイザナギの淡路島」、「スサノオとオオクニヌシの出雲」で、大きな経験をしました。
わたしたちの旅と、テキスト「古事記」をかさねれば、そこには以下のような「流れ」があると思えます。
★イズモからヤマトへ。
弥生時代、古事記の神話の中核をなす海洋民族「海人族」は、いくつもの初期国家を列島に形成し、大陸とも交渉を持ちます。
小国家どうしの紛争、淘汰と統合。
そのころ「外から」やってきたスサノオを始祖とした「出雲」が中国地方に大きなクニをつくります。スサノオは「銅鐸・銅剣」の先住者を駆逐・ないしは融和しながら、全国に勢力を伸ばしていったようです。
かくして八百万の「出雲の神々」は、列島の隅々に足跡を残します。
スサノオの末裔は、「オオクニヌシ」「オオモノヌシ」「オオナムチ」「オオクニタマ」などを名乗り、「出雲」から次第に東へ向かい、その権力の所在地(首都)を、「出雲」から「奈良」へとスライドします。
かくしてイズモを由来としたヤマト(奈良)を中心に、長い時間をかけ、さまざまな共同体の意識が次第にインテグレ―ト(統合、集約)されていきます。おそらく「神話」」も、豪族たちの成立とともに、体系的になっていったことでしょう。
しかし、この安寧は、ある日、晴天の霹靂のごとく、打ち破られます。
古事記によれば、地上に降りた「最後の神々=神武の軍勢」が北上し、北九州、瀬戸内海をへて「旧きヤマト」を攻略し、ついに新しい国家をうちたてます。
出雲由来の「大」一族と、「倭」の一族が統合されてきずいた「大倭」に「大と和」の漢字をあてた「新しいヤマト」政権。
神武の武装軍団は、すでに成立していた「旧きヤマト」を受け継ぎ、「前方後円墳」を共通シンボルとして、列島を席巻します。しかし出雲の神々も、その痕跡を各地に強く留め、けっして消え去ることはありませんでした。
ヤマトを舞台に、旧き神話が保たれたり上書きされながらも、やがて新たな物語が、大王たちの征服譚として、紡がれていきます。
「新しいヤマト」にとって、この奈良盆地は、なんとゆたかで、青垣にかこまれた美しい「まほろば」であったことでしょう。
さあ、旧きも新しきもが混在する、「神々のヤマト」への旅を始めましょう。
卑弥呼の陵墓といわれる「箸墓」古墳や、神武軍にくわわった武将の末裔たる豪族、「連合政権ヤマト朝廷」をうちたて、地元で東征軍に降ったり、独立勢力を保ったり、さまざまな変遷をたどった豪族たち、すなわち葛城、物部、蘇我、さらに古事記を選録した安万侶の出身豪族「オオ(大、多、太、意富)」氏などの痕跡をさぐります。
そしてヤマトにおける権力闘争、大王や仏教、そして海外根拠地をめぐるたたかいに思いをはせてみましょう。
ヤマト政権誕生の地、奈良盆地にロックオンした2泊3日の旅です。
訪問予定地:天理市、磯城郡(田原本町)、桜井市、橿原市、明日香村など。
2014年、2017年に「風カルチャークラブ」で古事記の講座を担当した児童文学作家・芝田勝茂と、大学で旅行学の教鞭をとる水野恭一が旅先案内人をつとめる、新鮮な視点と解釈による「古事記」を旅する三日間です。
ファンタジー作家
芝田 勝茂 (しばた かつも)
石川県羽咋市生まれ。児童文学作家。著書にファンタジー『ふるさとは、夏』(福音館文庫・産経児童出版文化賞)『ドーム郡シリーズ三部作』(『ドーム郡ものがたり』『虹への旅』『真実の種、うその種』日本児童文芸家協会賞他・小峰書店)古典に題材をとった『サラシナ』『虫めずる姫の冒険』(あかね書房)。また近未来を描く『進化論』『星の砦』(講談社)がある。編訳に『ガリバー旅行記』『西遊記』『ロビンソン・クルーソー』子ども向けリライトに『銀河鉄道の夜』『坊っちゃん』(学研)伝記『葛飾北斎』(あかね書房2016)『織田信長』(学研2018)など。『空母せたたま小学校』シリーズ(そうえん社2015-2016)や『ぼくの同志はカグヤ姫』(ポプラ社・2018)では近未来と古典文学が融合する、ユニークなファンタジー世界を描く。日本ぺンクラブ会員。
2013年から2018年まで『縄文サマーキャンプ』を山梨県で個人主催で実施した。
HP『時間の木』http://home.u01.itscom.net/shibata/index.html