北に鳥海山、南に出羽三山を仰ぐ庄内平野。古来から修験の御山。信仰の御山に守られ、山の幸、里の幸、海の幸に恵まれた当地の人々は、自然に生かされる感謝を胸に暮らしてきました。山形県の母なる最上川が日本海に注ぐ河口の湊町、酒田は、最上川舟運と日本海の北前船航路の要衝として大いに栄え、近世からはその繁栄が遠く諸国に及ぶようになりました。本間家をはじめ多くの豪商が輩出し、湊町酒田は商人が町政の長人として務める中、そうした人々の心意気を反映した祭礼は、厳かでありながらも賑々しく絢爛な祭礼が営まれてきたのです。
一見すると自然の景色と思われる一面の水田は新田開発の労苦の結晶であり、海岸沿いの松林は、風砂の害から身を守るため幾多の努力を重ねて植林をした結果なのです。同じように、生活が豊かになり、当たり前となった現代の生活の中でも、神前に祈り、感謝の誠を捧げて祭礼を営むという喜びを共にすることは、私たちが「豊かさ」「有り難さ」「幸せ」とは何かと再認識できるきっかけでもあるのです。
神社の祭礼は、全ての人がいて成り立ちます。一年一度の一番大切な神様へのおもてなし。酒田日枝神社の「山王祭」。ご一緒しませんか。
―酒田・日枝神社岡部信彦宮司より―
山王祭・神事について <現地アテンドの加賀谷氏より>
5月19日、神宿渡神事。次年の祭礼の主催者(神宿の主人)を定め、神様に来年の祭礼の場として認めて頂く神事。夜の帳が降りてから、神様の御分霊を神職が奉持して渡御の行列を整え、次年の神宿主人宅に神様を安置します。一連の神事の中でも最も重要な一つです。神様にお鎮まり頂く儀式です。厳かに、厳粛に神様に真心込めて奉仕します。
この度のツアーでは、この神宿渡神事をお手伝い頂くと共に、みちのくの小京都酒田を、神社仏閣や商人の街としての歴史を支えた本間家にまつわる施設を巡ります。
一日目を“知の探訪”として街の方々と交流を深めながら酒田になじんで頂き、海向寺では安置される即身仏を拝観。信仰心と商業に支えられた地域の歴史と暮らしに触れたいと思います。
二日目は“静の探訪”として、祭料理の体験や、日枝神社でのご祈祷や山王祭を迎えるにあたっての社務、神宿渡神事でのご奉仕を体験頂きます。
三日目は、“動の探訪”として、早朝より酒田の隣に在る遊佐町・丸池の神事にご参加頂き、庄内の地方の霊脈司る八幡神社への参拝を経て白装束に着替え、日枝神社での山王祭へのご奉仕に参加して頂きます。
お宿は、古くからの商人宿の風情も色濃い最上屋。ツアー中に供される食事も老舗割烹「香梅咲(かめざき)」や地元料理店からの協力による祭食。また、地元農家からの郷土食の提供も頂き、食文化を通じても小京都酒田を感じて頂きたいと思います。
講師
小野宮司 (おのぐうじ)
酒田市資料館・館長、八幡神社宮司
岡部信彦 宮司 (おかべのぶひこ ぐうじ)
酒田市日枝神社 宮司