南方熊楠(1867-1941)は、生物学者・博物学者・民俗学者として、明治~昭和初期に活躍した人物です。20代~30代前半にアメリカ・イギリスに遊学したのちは、ほとんどの時間を和歌山県の田辺で過ごしました。キノコや変形菌(粘菌)の採集、英文・和文論考の執筆などは多くは、田辺で行なわれたのです。
熊楠の旧邸が残っているほか、隣接する南方熊楠顕彰館に原稿、標本、蔵書、遺品が保存されています。講義では、これらを実際に目の前にしながら、熊楠の人生と、その仕事について紹介します。熊楠の愛猫や、安藤みかんや縄巻鮨といった地元の名物もとりあげる予定です。直筆原稿の「解読」にも挑戦してもらいましょう。さらに熊楠の仕事部屋や書庫・標本庫をお見せするほか、新種の変形菌が発見された柿の木にもご案内します。
田辺には熊楠が神社合祀反対運動によって守り、実際に生物研究のフィールドとした森があります。2日目はこれらを訪ねて歩きます。
熊楠が愛し、終生暮らした田辺を実際に訪れ、歩いてみることで、等身大の熊楠を身近に感じてもらえればと思います。
講師
志村 真幸 (しむら まさき)
1977年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。南方熊楠顕彰会理事、『熊楠研究』編集委員、慶應義塾大学非常勤講師。
2001年より南方熊楠旧邸での資料調査に従事。南方熊楠顕彰館にて特別展「ロンドン時代の南方熊楠」(2016年)、「南方熊楠と神秘主義」(2017年)、「南方熊楠と和歌山の食文化」(2018年)などを担当。
著書に、『熊楠と猫』(編著、共和国、2018年)、『南方熊楠英文論考[ノーツ アンド クエリーズ]誌篇』(共訳,集英社,2014年)、『日本犬の誕生-純血と選別の日本近代史』(勉誠出版、2017年)ほか。
●南方熊楠
南方熊楠(1867~1941)は、博物学、民俗学の分野における近代日本の先駆者的存在であり、同時に植物学、特に「隠花植物」と呼ばれていた菌類や変形菌、藻類などの日本における初期の代表的な研究者です。
熊楠は和歌山城下に生まれ、東京大学予備門(現東京大学)を中退後、1887年から1900年にかけて米英に留学しました。帰国後、那智での研究を終えた熊楠は、1904年に和歌山県田辺市に移り住み、1941年に亡くなるまでの37年間、田辺のまちを研究と生活の拠点としながら日本、世界に向けて情報を発信しました。
●南方熊楠顕彰館
南方熊楠が晩年の25年間を過ごし、研究に打ち込んだ南方熊楠邸(国の登録有形文化財)の隣に2006年開館しました。南方熊楠邸を保存・公開するとともに、邸宅に遺された彼の知的好奇心を示す25,000点以上の膨大な蔵書や資料を保存・研究し、その成果を発信しています。本年3月には館内の常設展示をリニューアルし、熊楠と田辺のまちをよりわかりやすく学ぶことができるようになりました。
※写真は「南方熊楠顕彰館(田辺市)」「南方熊楠顕彰会」所蔵のものを使用しています。
南方熊楠顕彰館URL