屋久島のエコツアーガイドの草分け的存在である屋久島野外活動総合センター(YNAC)で草創期からガイドを務め、現在はYNACクラシック代表の市川聡さんと行くスラウェシ島への動物観察の旅。
市川さんに思う存分、スラウェシの動物達のことを語っていただきます。
市川さんより~
かのウォレスが進化論を考えついたマレー諸島の中でも、彼を最も悩ませたのがこのスラウェシ島です。西をカリマンタン(ボルネオ)、北をフィリピン、東をマルク諸島・ニューギニアに囲まれたスラウェシ島は、アジア系の動物とオーストラリア系の動物がクロスオーバーし、動物地理区の境界であるウォレス線をどこに引くかで、最後まで頭を悩ましたそうです。
それもそのはずで、近年のプレートテクトニクスによる説明では、スラウェシ島の西半分がアジア大陸由来で、東半分がオーストラリア由来、そして双方がぶつかりあってスラウェシ島ができたと説明されています。このためアジアを特徴づけるマカカ属のサルやオーストラリアを特徴づける有袋類のクスクスなどが共存している極めてユニークな場所なのです。
同時に周囲の海峡は深く氷河期にも地続きにならなかったため、全ての哺乳動物が固有種で、バビルサやアノアといった極めて珍しい動物が生息しています。まさに動物や進化に興味のある人間にとっては聖地といえる場所です。
今回は、どこか懐かしい水田風景が広がるゴロンタロ州でじっくりとスラウェシ島の珍獣たちを探します。ナントゥの森では塩場の泥地で世界の珍獣バビルサやアノアを待ち、ヘックモンキーやアカコブサイチョウを探します。ナニワルタボネ国立公園ではスラウェシメガネザルやセレベスカワセミ、クスクスを探し、マレオの産卵を観察できればと思っています。
市川聡さんが撮影した奇獣バビルサの動画
上あごの牙が鼻を突き抜けて立ち上がり、湾曲して自分の頭に戻ってきます。これが頭蓋骨に突き刺さり、死に至ることも。このため死を見つめる動物とも言われています。3月は発情期の最終盤。雄同士の激しい争いが見られます。
楽しくて、ためになる知的インタープリター
市川 聡 (いちかわ さとし)
YNACクラシック代表。1961年生まれ。北海道大学大学院にて環境科学研究科生態系管理学を修める。学生時代はヒグマ研究会に所属。厳冬期でも野宿し、動物を観察するのが好きだった。卒業後、環境庁に勤務、屋久島に赴任。日本の自然の縮図のような屋久島の奥深さに触れ、心動き、環境庁を退職。屋久島野外活動総合センター(YNAC)を設立する。ボルネオへは数回渡航し、動物のいる森や植生の異なる熱帯雨林を視察。いつしか日本の動物園で声真似をしたらボルネオのサルが呼応するまでになった。