密教の尊格には、薬師如来は病気を治し、文殊菩薩は知恵を与え、愛染明王は恋愛を成就させ、毘沙門天は財運をもたらすなど、それぞれに役割分担があります。
別尊曼荼羅とは、祈願の目的に応じて、それらの尊格の中から特定の本尊を選んで中央に描き、その本尊と関係のある仏や菩薩、眷(けん)属(ぞく)といわれる従者の神々を周囲に配置した曼荼羅で、日本の密教で特に発展しました。
この講座では、平安末期に興(こう)然(ぜん)という学僧が編纂した別尊曼荼羅の集成である『曼(まん)荼(だ)羅(ら)集(しゅう)』を見ながら、バラエティー豊かな別尊曼荼羅の数々を解説します。
※前回の講座で扱うことができなかった別尊曼荼羅を解説します。
現役住職にして仏教美術研究家
川﨑 一洋 (かわさき かずひろ)
昭和49年、岡山県生まれ。高野山大学博士課程修了。博士(密教学)。現在、高野山大学特任教授、四国八十八ヶ所霊場第二十八番・大日寺住職。密教の曼荼羅を中心に、アジア各地の仏教美術、仏教儀礼を研究。ネパールやチベットの各地でフィールドワークを重ねる。
著書:『四国「弘法大師の霊跡」巡り』(セルバ出版)、『弘法大師空海に出会う』(岩波新書)
共著:インド後期密教(上)(春秋社) 第1章担当
インド後期密教(下)(春秋社) 第6章担当