50、60年前まで薬や薬草の知識は、祖父母から孫へ、親から子へ、またはガキ大将がいるような異年齢の子ども集団のなかで、意識せずとも暮らしの中で受けつがれてきました。しかし高度経済成長や核家族化にともない教育的な地域文化が失われてしまったいま、本講座では東秩父村のおばあちゃんたちと、その孫の世代にあたる西沙耶香さんを講師に迎えて暮らしのなかにおける“くすり”文化の再興を試みます。私、小川は田舎のガキ大将のように、また、薬剤師としてみなさんを懐かしい薬の世界に誘えればと思っています。
-協力・東秩父村 野草に親しむ会-
10月14日(土)〇秋 「甦る~紫雲膏を作る~」
万葉集に詠まれたごとくかつてムラサキ(植物)は日本各地に群生し染色に用いられていました。特に関東ローム層と相性がいいことから武蔵野は一大産地として名を馳せていました。しかし戦後の高度経済成長とともに激減し、いまは絶滅危惧種に指定されています。そんな貴重なムラサキが東秩父村のおばあちゃんの裏庭に奇跡的に残っていたのです。本講座ではムラサキ根を用いて火傷の妙薬である紫雲膏を作るともに、ムラサキをどのように受けつぎ復興していけばいいのかみんなで語りあいます。
※ムラサキ:ムラサキ科の植物。多年草。初夏に小さな白い花を咲かせる。根が紫色の染料に用いられる。
※紫雲膏:原料は紫根、トウキ、胡麻油、蜜蝋、豚脂の五種類。江戸末期に華岡青洲によって考案された火傷の妙薬。
【行程】東武東上線・小川町駅10時集合。路線バスにて白石車庫へ。「東秩父村・野草に親しむ会」の方々と合流し、里山などを散策。白石農村センターにて、講師を中心に「紫雲膏」作り。15時半ころ、農村センターにて解散。(路線バスにて小川町駅へ)
※集合地からの往復バス代(片道650円、約40分)は各自負担となります。
東洋と西洋の医学を薬学で結ぶ情熱の薬剤師
小川 康 (おがわ やすし)
富山県出身。1970年生まれ。「森のくすり塾」主宰。東北大学薬学部卒。薬剤師。元長野県自然観察インストラクター。薬草会社、薬局、農場、ボランティア団体などに勤務後、 99年1月よりインド・ダラムサラにてチベット語・医学の勉強に取り組む。2001年5月、メンツィカン(チベット医学暦法学大学)にチベット圏以外の外国人としては初めて合格し、2007年卒業。晴れてチベット医(アムチ)となる。チベットの歌や踊りにも造詣が深い。2009年7月小諸に富山の配置薬を扱う「小川アムチ薬房」開店。(現在は「森のくすり塾」に改称、長野県上田市野倉に移転、開業)2015年3月、早稲田大学文学学術院を卒業。修士論文のテーマは「薬教育に関する総合的研究」 著書:『僕は日本でたったひとりのチベット医になった ヒマラヤの薬草が教えてくれたこと』(径書房)『チベット、薬草の旅』(森のくすり出版)
『チベット医・アムチ小川の「ヒマラヤの宝探し」』を風の旅行社社サイト内で連載中。
講師
西 沙耶香 (にし さやか)
元東秩父村地域おこし協力隊/地域コーディネーター
1990年埼玉県東秩父村生まれ。立教大学社会学部現代文化学科卒。”村育ち”を強烈にコンプレックスに感じていた中高時代を経て、”村も捨てたもんじゃない”と大学時代に大転換期が訪れる。「持続可能な地域づくり」に関心を持ち、自然体験ボランティアに関わる。都内で就職後、2015年にUターンし同村初代地域おこし協力隊員に。主に和紙フェスなどの和紙関連イベントの企画運営と体験交流事業を開始。山里の知恵を暮らしに生かす地域住民と一緒にプログラム作りから取組む。卒隊後は、任意団体NERYを立ち上げ近隣町村における体験交流プログラム開発に携わる。理事を務めるNPO法人あかりえでは民泊事業も開始し、等身大の地域らしい姿を体感してもらう機会作りに奮闘中。
関連読み物
第267話 ムクッポ ~紫色~ チベット医・アムチ小川の「ヒマラヤの宝探し」
開講記:暮らしの”くすり塾”-東秩父村- 【秋】よみがえる紫雲膏