ロケットで宇宙にまで活動域を広げている人類がいまだ到達できない過酷な環境「地殻深部~マントル」。そこにはどんな岩石があり、どんな地質学的な環境があり、今何が起こっているのか?案内者の専門分野でもある「地球深部の謎に迫る・地殻とマントル」シリーズ。1年に1,2回のペースでこのテーマを様々な場所で展開・深堀しています。
第2回目は、マントル付近まで沈み込んだ地表の堆積物 藍の国の藍の石 眉山 です。
徳島市中心部、ロープウェイがかかり、市民に愛さている眉山。映画のタイトルとしても有名です。実は、その眉山、地質学でもとても有名な場所。西南日本外帯に東西に広く分布する三波川変成帯。海洋プレートの沈み込みによって形成された変成岩から構成されています。四国エリアはその三波川変成帯の露出状況が非常によく、多くの研究がなされてきました。現在露出する岩石から、その岩石ができた物理条件を推定し、条件を満たす場所は、地球のどんな場所か? そんな推理小説のような過程を経て、形成メカニズムの全容が明らかになってきています。
眉山エリアには、低温高圧型の典型的ない岩石である結晶片岩、それも、海洋プレートの一部を形成する火成岩が起源の、塩基性結晶片岩が広く露出しています。四国で一般的にみられる塩基性結晶片岩は、緑色。しかし眉山では藍色が目立ちます。藍染の國だから?いえ、地質学的に大きな意味のある藍色。日本での数少ない貴重な露出地です。
日本の変成岩岩石学に大きなインパクトあたえ、低温高圧型変成帯の日本での存在を証明した眉山。東西に縦走し、遠く、MTLの活動で形成された吉野川沿いの地形などを眺望解説します。
~ジオ・ワード~
低温高圧型変成作用 変成分帯 鉱物の安定領域 藍閃石 結晶片岩 MTL
※詳しくは当日の解説で!
~行程~
JR徳島駅→バス→地蔵院前回転場(10:00)→地蔵越え(11:00)→眉山(12:10 昼食休憩 12:50)→眉山縦走路入口(13:30)→山頂駅(14:20)→山麓駅(15:50)
※早く下山できれば、希望者と城山散策
【歩行:4時間 標高差累積:上り約450m 下り約480m】★
※注 歩行の目安(★マーク)の基準(距離とコース難度の両方を検討)
★ 一般的なハイキング程度
★★ 歩行時間も少し長めのためやや体力が必要
★★★ 少し登山の経験がある人に適している
固い石も柔らかく解説
田中 宙 (たなか ちゅう)
1968年生まれ。京都大学大学院理学研究科修了。地球惑星科学専攻。主にフィールド調査をベースに地殻とマントル境界の物質科学を研究。現在、株式会社アカデミック・ブレインズ、シニア・ディレクターとして、基礎科学系を中心にアウトリーチと呼ばれる「最先端の研究成果を社会へフィードバックする仕事」に取り組んでいる。一方でフィールド経験を生かし、関西エリアの各地山域でネイチャーガイドとしても活躍。日本地形学連合正会員。