文●田中真紀子(東京本社)
アマンコラ・ティンプー外観
ブータン国内の高級ホテルをご紹介する、シリーズ第三弾。今回は真打登場、ブータン初の外国資本ホテル「アマンコラ」です。首都ティンプーの高級住宅街の中にあるアマンコラ・ティンプーに宿泊させていただける好機を得られ、意気揚々と訪れました。 今までいろいろな旅をしてきましたが、これ程ホテルの部屋で快適な時間を過ごせたのはかつてなく、アマン・ジャンキー*1なる人々が世の中に大勢いるのもなるほどこれは頷ける、と納得した滞在となりました。
バックパッカー向け相部屋安宿の対極にある、まさに「滞在中いかに快適に過ごせるか」をメインコンセプトに据えた「ブータンにあって、ブータンでない空間」、それがアマンコラでした。
アマンコラ
アマンコラ・ブムタン
アマンコラ・プナカ
第四代国王*2 の許可のもと、アマンリゾート(以下、アマン)が外国資本のホテルとして初めて「アマンコラ」をオープンしたのは2004年のこと。
サンスクリットで「平和」を意味する「アマン」、そしてブータンの公用語ゾンカ語で「聖地巡礼」を意味する「コラ」。この二つを組み合わせた「アマンコラ」という名が、ブータンで展開するロッジの総称です。現在アマンコラは西・中央ブータンに5つのロッジを展開しており、各ロッジは「アマンコラ・○○」と地名との組み合わせで呼ばれています。(現在、オープンしているのはパロ、ティンプー、ガンテ、プナカ、ブムタンの5つのロッジ。)
アマンコラ・パロ
焚き火にあたりながら森を望む
アマンコラ・ガンテからポブジ谷を望む
アマンコラで特筆すべきはその立地。アマンコラが建っている場所の多くは王族から特別許可が出た場所で、事情を知らないと「どーしてこんなところにホテルの建設許可が貰えたの??」と思わずにはいられない場所ばかり。今回私が滞在させて貰ったアマンコラ・ティンプーも王族の邸宅が並ぶ高級住宅地区の松林内にあり、比較的市内から近い場所にあるにも関わらず、街の喧騒が届かない別世界でした。
他のロッジもそれぞれ特筆すべき特徴を持っています。大僧正(ジェ・ケンポ)によって建てられた伝統的な農家を改築したアマンコラ・プナカ、ワンデュチョリン宮(現王室ワンチュック家の第一、第二代国王の宮殿)に隣接して建ったアマンコラ・ブムタン、ドゥゲ・ゾンへと続く散歩道を持ったアマンコラ・パロ、そしてフォブジ谷を一望できるアマンコラ・ガンテ。各ロッジはアマンがそのコンセプトを生かすに「ベスト」な場所が選ばれているのでしょう。
広く快適なゲストルーム
ゲストルーム内部
Welcomeドリンク(ブムタン産りんごサイダー)と、 アツァラの仮面の根付がついている部屋の鍵
セキュリティーボックス、ロッジ内を歩きまわる時に便利なボストンバッグ、ドライヤー、傘などが用意されている他、通常ブータンのホテルでは多くを望めないアメニティ類も充実しています。タオルやバスローブからはレモングラスの香りがし、ラベンダーやサイプレスなどの精油が入ったバスソルト、マッサージオイルなども常備してあり、心地よいバスタイムが過ごせます。またアマンコラのコンセプトに合わせ、室内にオーディオ機器、テレビはありません。かわりに自然の音楽-川のせせらぎや鳥の声-が聞こえ、この広い部屋でリラックスするに最適な環境が整っています。
壁一面ある広い洗面所
シャンプーなどは
陶器の入れ物に入っている
アマンコラの食事
ダイニング・ルーム
夕食時、ダイニング・ルームへ行くと部屋中央のブカリに火が灯り、奥ではダムニェン*3奏者の若い男性が唄う、なかなか良い雰囲気。アマンの夕食は洋食かタイ料理のいずれかからコースを選べます。私は洋食をチョイス。前菜のサラダ、イヅィ入りのクリームスープ、魚料理、口直しのシャーベット、肉料理、そして最後にデザート、と文字通りのフルコース。食材の確保が大変なのでは? と思って質問してみると「主な食材は全てバンコクやインドから空輸しているとのこと」。驚きとともに宿泊代(食事代込)が割高になる理由の一つを知ることとなりました。食材を新鮮に保つため、アマンコラ・パロには巨大な冷蔵庫があり、週に一度各ホテルに運ぶそう。またブムタンなど必要な野菜が市場で手に入りにくい地域では、週末ティンプーで開かれるサブジバザール(野菜市場)へスタッフが毎週買出しへ行くそうです。肉料理、魚料理の味は若干薄味に感じたものの、全体的に美味しく、盛り付けも美しく、通常観光客が案内されるレストランとは一線を画したクオリティでした。
食事例:夕食のスープ
食事例:朝食のパンケーキ
アマンコラ滞在のアドバイス
高級ホテル宿泊の際、服装を気にされる方が多いかと思いますが、アマンコラでは滞在中、ドレスアップをする必要はありません。私も滞在中はスラックスにカーディガンというラフな服装で過ごしました。ブータン人の接客スタッフは制服を着ていますが、マネージメント・スタッフ(非ブータン人)もシャツに綿のズボンなどリラックスした服装で仕事をされています。
また宿泊の際、もう一つ気になるのはチップのことではないでしょうか。チップは基本的には心づけ。宿泊代金の他に別途サービス料がかかりますので、基本的には支払わなくて大丈夫とされています。が、ここはセレブレティが多く集う宿。一般人からは想像もできないような高額のチップを支払うお客様は多くいらっしゃると噂で聞いております。ブータン人スタッフもチップを貰い慣れているのは事実でしょう。
チェックアウト後、旅の安全を
祈願して僧侶が法要を行ってくれた
時計を外し、五感を解放し、リラックスするためのホテル、アマンコラ。前回ご紹介したウマ・パロ同様、その良さは1泊でも勿論体験できますが、その良さに本当に浸り、味わうには是非とも連泊をお勧めします。もちろんその前には1泊15万円の大きな壁が立ちはだかっているのですが・・・。それでもやっぱり思ってしまうのです、「あぁもう一度あのロッジに泊まりたい!」
- 熱烈なアマン・リゾートのファン。世界中のアマンのロッジを旅する方々。
- # 第四代ジグメ・シンゲ・ワンチュク国王(当時)。2006年12月に譲位し、息子のジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク第五代国王に王位を譲った。第五代国王の戴冠式は2008年11月に行われた。(2008年11月末現在)
- 弦楽器。7本の弦がある。系統的には三味線に近いとされる。
[参考料金]
151,000円~171,000円(1室)
*スイート(8~24部屋)
*部屋数はロッジにより異なります
料金は予告なく変更される場合があります。
また、円=ドルレートにより変動する場合があります。
上記料金はアマンコラロッジの一泊の宿泊、お食事(3食)、お飲み物(ハウスワインや各種アルコールを含むハウスドリンク込み)。
<ご注意>
上記はツアー代金に追加で必要となります。
ホテルのみのご手配は承っておりません。