添乗報告記●自転車で讃岐 -うどん平野を縦横無尽-

空港でも早速うどんがお出迎え
空港でも早速うどんがお出迎え

2009年10月17日(土)~18日(日)1泊2日
講師●丹羽 隆志
文●八田 裕子(東京本社)

うどんの聖地、讃岐平野(香川県高松市~丸亀市)を自転車で縦横無尽に走り回り、うどん店があれば立ち寄らずにはおかないという、1泊2日讃岐うどん三昧の一風変わった自転車ツアーに同行してきました。


うどんの看板とお店の看板おばあちゃん
うどんの看板とお店の看板おばあちゃん

「皆さん、これがうどんの看板です。」「おお~~っ!」と、うどんの看板を見ただけで異常な盛り上がりを見せるハイテンションの中、高松空港からスタートした『自転車で讃岐』ツアー。前日まで、雨になるでしょうと言い張っていた天気予報をひっくり返し、爽やかな秋晴れの下を快走しました。

ここは讃岐平野です。いや、うどん平野と言ってもよいでしょう・・。至るところうどんの看板だらけです。最近はETC効果もあって土日となれば長蛇の行列も必至という名店もあるそうですが、讃岐全体で見ればうどん店は星の数ほどあり、そのキャパは大海の如し。決して食いあぶれるということはありません。

物干し台のようなアットホーム空間で頂きます
物干し台のようなアットホーム空間で頂きます

今回、講師の丹羽さんは1週間以上前から四国入りし、香川にいる間朝から晩までうどんを食べ続けて下見をして下さったそうです。そんな丹羽さんが最初に私たちを案内してくれたのは知る人ぞ知る地元密着型うどん店「池内」でした。

噂には聞いていましたが、本当にまるで人んちです。ここはうどん屋でしょうか物干し台でしょうかとクイズを出したら十中八九答えを誤るでしょう。しかし、うどんの味は確かです。コシといいつゆといい言葉をなくす美味しさで、一玉あっという間にお腹に収まりました。すばらしい讃岐うどんの世界に足を踏み入れた瞬間でした。

秋祭りのお神輿に遭遇!(丸亀)
秋祭りのお神輿に遭遇!
(丸亀)

自転車がいかにうどん行脚に適しているかを実感したのはここからでした。うどん店だらけの讃岐では車で旅行していたならものの2,3分で次なる店に到着してしまうことでしょう。いくら美味しいからといって、そんなに立て続けにうどんばかりを食べることはできません。私たちは自転車に乗り、うどん店からうどん店へ美しい讃岐の秋を愛でながら移動しました。旧道や路地裏を巧みに結ぶ丹羽さんの絶妙なルーティングは今回も健在。ちょうど秋祭りのシーズンで、金刀比羅宮に続く金比羅道では獅子踊りを目撃したり、丸亀の商店街では子供神輿に遭遇したりと、幹線道路からは見ることができない季節感に浸ることができました。ずっしりと頭を垂れた稲穂があちこちの田んぼで刈り取りを迎えていましたが、米に心をかき乱されることなく、一心にうどんを念じて次の店へ。到着したときには、美しい景色で心癒され、お腹も落ち着いてうどんを美味しく食べられるという最高のコンディションが整っていました。

「山越」といえば讃岐うどんファンなら誰もが知っている名店です。長蛇の列に交通整理とさながらテーマパークの様相。なにわ、岡山、神戸と県外ナンバーの車が次々と駐車場を探してやってきます。私たちは自転車ですので、道路の隅にささっと止めてしまって列に並びました。道の狭い讃岐ではこの機動性も自転車の魅力です。

うどんの行列は流れが早いです
うどんの行列は流れが早いです

うどんは注文してからがとにかく早いです。休日ともなれば麺が終わるまで列が途切れることがない山越では休むことなく麺を茹で続けているため、注文したうどんはものの1分も立たないうちに出てきます。行列はどんどん店の中に吸い込まれ、同じだけの人々がうどんを平らげ満足して店から放出されていきます。山越はもともと小さな製麺所だったそうですが、早い・安い・うまいといううどんの特性を最大限に生かし、ものすごい回転率でもきちんとおいしいうどんを提供することに成功した数少ないお店なのです。

讃岐うどんの一玉はちょっと少なめ。食事として成り立たせるには二玉にしたり、天ぷらなどを載せてボリュームを出します。しかし、たくさんの店でたくさんのうどんを味わえるのは、ちょっと少なめの一玉という設定があるからこそ。おやつにだってうどんを食べるという讃岐だからこそ、うどん店めぐりという楽しみ方ができるのです。

2日間で7軒のうどん店を回り、うどんアイスまで食べましたが、讃岐のうどん文化の奥深さには感心するばかりでした。湯だめと釜揚げの微妙な食感の違い。釜玉と冷やしぶっかけ玉子つきの違い。うどんを愛するがゆえに生まれた無数の嗜好。自転車に乗りながら「次は何にしようかな?」と考え、いつしか自分もその中にお気に入りの食べ方を見つけていることに気がつきます。最後の最後までうどん尽くしでしたが、自転車でカロリーを消費しているからか、不思議なことに食べれば食べるほどさらに食べたくなるのです。散々うどんを食べてきたにも関わらず、ゴールを目前に訪れた最後の店では名残惜しさにお代わりまでしてしまう方もいらっしゃいました。でもその気持ちよ~く分かります。

かけ・げそ天つき(中村うどん)
冷玉(名もないうどん屋)
牛スジ煮込カレー(うどんバカ一代)


讃岐うどんを志す方がいれば私は間違いなく自転車を勧めるでしょう。自転車でおなかを減らし、うどんで自転車を走らせる。合理的、健康的(体重増えましたけど・・)なこのツアー、次回が待ちきれません!