雪化粧のヤムドク湖ピクニックランチとシガツェ郊外の民家訪問(2010年5月)

コース:知られざるラサとチベット三都周遊 9日間
文●荻原文彦(東京本社)

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ヤルンツァンポ川よりカンパラ峠方面を望む
5月1日発『知られざるラサとチベット三都周遊 9日間』に同行させていただきました。ツアーポイントは弊社ラサ駐在員にして社会人類学者であるチベットの達人が、「知られざるラサ」ということで、巡礼地や聖地など観光地以外のラサの穴場スポットをご紹介することです。そのあたりの様子は、年末年始の報告記をご参照いただくとして、今回は私自身も初めてのヤムドク湖ピクニックランチとシガツェ郊外の民家訪問の様子を紹介します。



トルコ石の湖=ヤムドク湖

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8月の様子
ヤムドク湖と菜の花

ラサからヤルンツァンポ川を渡り、ラサ・ゴンカル空港とは反対側の西へ進みます。
「扇状地のような谷間には水源を確保した集落が点在し、荒涼としたチベット高原の中でちょっとしたオアシスのような雰囲気があります。そんな光景を横目に、山腹を上り始めると大きな九十九折の高原ドライブが始まります。高度が上がるにつれて、山羊や羊から、徐々にヤクの放牧が目立ちます。やがてスカイラインが近づき、標高4,750mのカンパラ峠に到着すると、トルコ石のような神秘的な色合いを見せるヤムドク湖とのご対面。信州のビーナスラインの 100倍の景観!」…。

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うっすら雪化粧の道
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標高4,750mのカンパラ峠

これが、以前訪れた時に感じたヤムドク湖への道のりだったのですが、今回は前夜の雪(ラサは雨)によって、標高4,300m位からは雪化粧に様変わりしていました。ガイドのペンパも「You are lucky man!」。そう、標高が高く日差しが強くて降水量の少ないチベット高原は、直前の降雪がなければなかなか雪の中 を走ることはないのです。
雪化粧の高原ドライブにバスの後方座席から「キャーキャー」言いながらカンパラ峠に到着(車酔いしやすい方は揺れの少ない前方座席がおススメ)。カンパラ峠はラサからの容易なアプローチでチベットの雄大な自然を見ることができるため、一大観光地なっていました。トイレやちょっとした売店のあるビューポイントでは入場料もしっかり徴収されます。チベット犬の首にヤクの尻尾の毛を巻きつけた怪しげな犬や、デコレーションしたヤクを連れた地元の人々が記念写真を撮らないかと熱心に売り込んでいます。

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カンパラ峠より湖畔を望む

ヤムドクがトルコ石の湖と呼ばれるのは、広く複雑な形をした湖(琵琶湖位の大きさ)に、ミネラルを含んだ沢水が多方面から流れ込み、山の陰や雲の陰、太陽光によって濃淡様々な青色を見せてくれるからですが、今回は太陽光が弱く色の変化をあまり見られなかったのが残念でした。
少しだけ雪合戦をしてバスに戻りました。

天に近い湖畔

峠は冷たい風が吹き、頬が引きつるほどでしたので、湖畔脇にバスを止めて車内でお弁当を食べることも覚悟したのですが、周りを山に囲まれた標高約4,400mのヤムドク湖はほとんど風が無く、強い紫外線が降り注いでいました。

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「どこでもどうぞ〜」
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湖面の波以外無音の世界

道端にバスを止めホテルで用意してもらったお弁当を持って、いざ湖畔へ。「お好きなところどこでもどうぞ〜♪」、私達の他に観光客はおらず湖畔を独占でした。
高所特有の張りつめた空気の中、聞こえるのは湖面の波の音のみ。そして湖面や周囲の雪山がキラキラと眩く、なんだかそのままヤムドク湖か天に吸い込まれてしまいそうな感覚にとらわれました。

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お弁当

私達は、標高3,650mのラサで4泊して4,300m位の山の中腹にある尼寺を訪れるなど、しっかり高所順応していたので、それほど息苦しさや行動障害を感じることなく天空の湖畔でピクニックを楽しむことができました。
食後、平べったい石を集めて早速「水切り」を始めました。「川とかあると、必ず水切り始める人いますよね〜(笑)」、とちゃちゃを入れられながらも何名かで童心にかえり夢中になりました。
夏には小さな草花など、また違う景観が楽しめることでしょう。

シガツェ郊外の民家へ

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シガツェ郊外の村へ

ヤムドク湖から、7,000m峰ノジンカンサンの氷河を望むカロラ峠(5,045m)を越え、チベット第三の都市ギャンツェへ。ギャンツェで1泊し、チベット最大級の仏塔擁するパンコル・チューデを訪れた後、麦畑が広がる穀倉地帯を西へ走ります。馬や、高所で活躍する毛長牛・ヤクが、畑の土おこしに奮闘している様子が車窓を流れていきます。シガツェ手前10Km位で未舗装路に入り、バスは20戸位の集落に到着。いずれも1階が家畜小屋で、壁や屋上に燃料となるヤクの糞を蓄えている伝統的なチベットの民家です。ヤクの糞の蓄えが多い家は、家畜の数も多く大きく裕福? な家ということになるそうです。狭い村の道を進むと、めったに外国人が訪れないからか、村人は怪訝な顔を私達に向けています。なんだか申し訳ないような不安な気持ちになりそうなところ、訪問先の家族の笑顔が見えました。「タシデレ!」。
 
門をくぐり、家畜を横目に急な階段を2階へ上り居間のような部屋へ。外は強烈な日差しですが、室内は風通しもよくひんやり心地よかったです。チャン(チベットの濁酒)、バター茶、ヨ(甘くない麦のポン菓子)、チュラガモ(ヤクのチーズを固めたもの)で歓迎を受けた後、台所や屋上などを見学。太陽光の湯沸かし器やヤク糞を燃料にするかまど、機織機など生活の知恵がつくりあげた様々なものがあり、皆興味津々。

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燃料となるヤク糞
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機織機

お寺巡りや長い移動などで少し疲れのあった私達ですが、近所の子供達が遊びに来てたくさんの笑顔を見せてくれて、とても和やかなひと時となりました。
以前、『自転車でヒマラヤ縦断』というツアーで、ティンリー近くのとある村で民家を訪れた時にも感じましたが、厳しい自然環境の中で半農半牧の生活を送る彼等は真っ黒に日焼けしてたくましく、一見強面ですが、深い皺が刻まれた笑顔にはなんともいえない優しさがにじみ出ています。

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遊びに来た近所の子ども
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シガツェ郊外 民家訪問にて

2008年のラサ暴動の後、観光客が一時途絶えたチベットですが、現在は落ち着きを取り戻し世界中から人々が訪れています。ポタラ宮以西の新市街や鉄道駅周辺の開発がより進み、空港からラサ市街への新しい道路の工事も始まっています。どんどん変わっていくチベット…。しかし、敬虔な祈りの姿や雄大な自然、そしてチベット高原でたくましく暮らす人々の姿はいつまでも変わることはないでしょう。