米国大統領選

米国大統領選挙があっさりと終わった。トランプ氏の圧倒的な勝利だ。報道の解説では、貧富の差の拡大、インフレ、不法移民問題など国民は現在の民主党政権に不満を持っている人が多く、その不満の受け皿はハリス氏ではなくトランプ氏だったということのようだ。

トランプ氏の“奇行”はこれからも続くだろうが、その考え方、政策そのものに注目したい。基本は、“アメリカファースト”すなわち全ての基準は米国の利害にありイデオロギーではないということだ。

歴代の米国大統領があれほど拘ってきた、“米国こそが自由と民主主義の守護者”という考え方はトランプ氏にはない。“力による平和”と主張するが、力とは軍事力のことではなく、関税を上げて経済的な締め付けをすることらしい。戦争反対派は、「話し合いによる外交の力で平和を」というが残念ながら実効性には欠ける。トランプ氏は経済的な報復を武器にする。ウクライナとロシアの戦争もすぐに止めてみせると豪語している。その言葉の真否が直ぐにも試されるだろう。日米安保条約も“もはや日本は自主防衛をするべきだ”として米国が日本の庇護者として防衛を担うことに正面から異議を唱えている。

19世紀の初め、米国は欧州と相互不干渉を掲げた。俗にモンロー主義といわれる。歴史的な背景も何もかも違うが、トランプ氏は、米国が率先して進めてきたグローバリズム・反保護主義を無視し、孤立主義と保護主義に向かうつもりだ。

些末な話かもしれないが仕事柄為替の動向が気になって仕方がない。保護貿易で米国の関税が上がれば、米国は再びインフレに向かいまた円安が進む。トランプ氏自身は、ドル高が米国を貧しくしていると主張しドル安にすると主張しているが、経済の専門家からは、トランプ氏は経済音痴とレッテルが貼られている。来年の夏は、ツアーの値段が少し下がると期待していたが難しくなってしまうかもしれない。

グローバリズムがいいかというと決してそうではない。GAFAなどの巨大企業が世界市場を席巻しているが、それがいいことだろうか。グローカルなどという言葉もあるが、地域のコミュニティーや文化、伝統、習慣が代々受け継がれていくことの方がとても大切だと思う。もちろん、トランプ氏がグローカルなんて考えるはずはないが。

民主主義は、制度であって実態には様々な矛盾がある。それでも、ルールを破ることは恥ずかしいという、モラルとプライドが制度の隙間を埋めて意義あるものにしている。ところが。もはや米国はフェイク情報が国中に溢れ、次第に真実を見極めることも放棄し、何の根拠もないのに悪口と罵りがまかり通るヘイト国家になりつつある。コロナ禍を何とか乗り越え生き延びたのに、こんな不安定な世界がやってくるとは思わなかった。深憂とはこのことだ。

さて、弊社のメルマガは今回で1000号を迎えました。およそ20年続いています。私のこの稿も、今回で826話を数えました。編集部にお願いして、毎週書くのは次号11/14までとし、それ以降は、月一回、第一木曜日に書くことで勘弁してもらうことにしました。その他の週は、何らかの形で誰かが別のものを書いてくれるものと思います。最近は、日曜の午前中に家の近くのモスバーガーでこれを書くことが習慣になっています。月一回ですが、引き続きよろしくお願いいたします。

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