ここ10年程、日本の若者は海外に行こうとしないといわれ続けてきた。理由は、経済的な理由が最も多いから「行こうとしない」というより「行けない」というのが真実かもしれない。特にコロナ後の海外旅行は、かなり高くなってしまったので無理もない。
しかし、2番目と3番目の理由は「治安に不安があるから」、「語学に不安があるから」というのだから、やはり不安を感じて「行こうとしない」若者が多いということだ。つい15年ほど前までは、怖いもの知らずに一人旅をするのが学生の海外旅行の主流だったと思うが、随分変わったものである。
最近、ホノルルで、入国しようとする日本人の若い女性が追い返されるケースが増えている。“ちょっと働けば結構な収入になる”。そんな話がSNSで広がり、観光VISAで出稼ぎにくる女性が増加し、ハワイ当局が警戒して入国審査を厳しくしているからだ。
2023年1月23日と少し古い朝日デジタルの記事だが、「日本人、静かに進む海外流出 永住者が過去最高の55.7万人に」と報じられた。同記事によれば、海外で暮らす日本人は約130万9千人。内、長期滞在者はコロナ禍で3年連続減少したが、在留国で永住権を認められた「永住者」は20年連続で増加し、10年前と比べても約14万人超増えた。地域別では北米(約27万4千人)、西欧(約9万人)、オセアニア(約7万6千人)が多い。男女比は女性が約62%と多いが、職業や年齢などは明らかにされていない。
永住権を獲得するには、少なくとも数年がかる。ということは、ハワイに出稼ぎに行く女性のように現在の欧米のインフレだけが原因ではないということだ。
海外旅行に行く、あるいは、海外留学する若者が減り、内向きになった若者が増えて日本の行く末が心配だとよくいうが、海外に生活の場を求め永住する日本人は増えている。コロナが収束してからは、海外のインフレが明白になり、高収入を求めて稼ぎにいく若者が増えているという。私の偏見かもしれないが、大卒出のエリートたちではなく少々社会からはみ出した人たちが、日本に見切りをつけて飛び出していくのではなかろうか。
明治維新後、新政府の統治体制からはみ出した士族や、西洋思想を嫌いアジアに出て東洋思想を確立しようとした若者が大勢いた。“大陸浪人”と称したが、その他にも日本社会からあぶれた有象無象の人たちが中国大陸やユーラシア大陸、シベリア、東南アジアに移住していった。これが、第二次世界大戦終了時まで続く。意味合いも理由も全く違うが、現代の若者が、広く海外に自分が生きる世界を求めて雄飛するなら応援したい。孤独で辛いことも多かろうが、頑張れ!
※次回からこの稿は、月一回、第一木曜日の掲載になります。次回は12月5日です。