アウトがダメならイン?

2024年の訪日客数は3686万人。対前年比47%増で史上最高を記録した。その国内消費額も8.1兆円に及んだ。1年前・2023年の「UNツーリズム」の統計ではあるが、世界の観光客数は、トップがフランスの1億人、次いでスペイン8571万人、日本は14位で2507万人。同じ島国の英国が3722万人だ。おそらく、2024年の統計では日本はトップテン以内に入ることだろう。

それに比して日本人の海外渡航者数は1300万人。コロナ前の2019年と比べるとまだ65%しか戻っていない。円安や海外のインフレ状況から考えると1300万人前後で固定してしまうのではないかと心配だ。

インバウンドとの比率はおよそ3対1。訪日客数が多数見込めるアジア路線は増便されるが、それほど数が見込めない国・地域への便は増えない。その上、航空会社は、混み具合によって航空券料金が変わる個人用の変動運賃へとコロナ前から施策を転換しいる。弊社では、現在のことろツアーで使う航空券を何とか手に入れているが、次第にツアーで使える航空会社は限定されてきている。

アウトバウンドは不調でも、インバウンドで旅行会社は好調でしょうといわれるが、実は、日本の旅行会社のインバウンドの取り扱いは全体の2~3%に過ぎない。

その理由は、インバウンドの9割は日本の旅行会社を通らないFIT(個人旅行)だからだ。日本は交通機関、宿泊施設、レストラン、観光施設等のインフラが整い治安もよい。インターネットで飛行機とホテルを予約し、JAPAN RAIL PASS(7日間、14日間、21日間で設定されたJR乗り放題パス)を購入して、旅行会社を使わず日本にやってくる。言葉の壁はあるが、駅などの表示も多言語化され、最近はAIも使える。日本は、まさにFIT天国である。

訪日客の残り10%も、殆どが日本在住や日本に事務所を開設した外国の旅行会社・個人が扱っている。日本の旅行会社は、海外の旅行会社から依頼される団体客等でありその数は少ない。

かくいう弊社もインバウンドの取り扱いは皆無である。もともと、弊社がアウトバウンドとして取り扱う国・地域からは、日本で働くことを目的にやって来るが、観光旅行にはあまり来ない。来たとしても東京と大阪へいき、ディズニーにUSJ、買い物、日本食などが目当てである。そういう旅行は弊社ではオペレーションしても料金は高くなってしまう。

輸入(アウトバウンド)専門会社が、輸出(インバウンド)をやろうと思っても、今まで獲得してきた日本人のお客様ではなく見知らぬ外国人に売らなければならない。まさにゼロからの出発になる。実際、インバウンドのwebサイトも作っては見たが、もちろんそれだけでは売れない。

インバウンドは、日本にとっては救世主のような役割を担っている。モノづくり大国に陰りが見えてきて、日本の貿易収支が悪化してきてインバウンド収入は大きな位置を占めるようになってきた。

2024年の輸出額を観てみると自動車が17.7兆円、訪日客消費額の8.1兆円はこれに次いで2位。3位は半導体等電子部品で6.1兆円である。2030年に訪日客消費額が15兆円になれば、ほぼ自動車産業に匹敵するというから驚きだ。

道路、ダムなどのインフラ整備で地方に現金を落とせなくなった今、インバウンドは、現金を全国に行きわたらせ、様々な雇用を生み出すことができる。実際には、訪日客の7割が東京、京都、大阪のゴールデンルートに集中しているが、それを何とか地方に分散させ、地方創世の大きな切り札にしたいというのが政府の意図である。

弊社もそれに貢献したいが、今は、指をくわえてただ観ているだけである。何とかしたいものだ。

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