
馬頭観音
先日、モンゴル担当の山田に誘われて埼玉県東松山の上岡観音の例大祭を訪れ「騎乗安全・馬旅安全」の御祈祷をしていただいてきました。関東でも随一の馬頭観音霊場として名高い上岡観音には、馬主や調教師、乗馬クラブ関係者など馬に関わる関係者が集い、大賑わいでした。例大祭の様子はモンゴル担当の山田のブログに詳しく書かれているのでここでは割愛します。
馬頭観音は日本では六観音(七観音)の1つで、仏教で説かれる6つの世界「六道」のうち畜生道を守護する観音とされています。馬が草を食むように煩悩を食べつくし粉砕してくれる災難を取り除いてくれるとされ、馬頭明王とも呼ばれます。かつて馬は大切な交通運輸手段であったことから、交通や動物の守護神として信仰されてきました。
姿かたちは恐ろしい憤怒形なので優しく諭してくれる馬頭観音(菩薩)というより、恐ろしい迫力で悪を調伏し仏道に導いてくれる馬頭明王と呼ぶほうがしっくりきます。サンスクリット語ではハヤグリーヴァ(馬の頭を持つもの)。もともとハヤグリーヴァはヒンドゥー教では、世界の終わりのとき、眠っていたブラフマーの口から滑り落ちたヴェーダ(聖典)を盗みとった悪魔の名で、ヴェーダを取り戻すためにヴィシュヌ神がハヤグリーヴァの姿になったされ、ヴィシュヌ神の化身の一つとも考えられています。また不死の霊薬アムリタから生じたとも言われ、敵を調伏する激烈な力を持つヒンドゥーの神様が仏教に取り込まれたものです。そのため、もともとは観音様の脇に侍る眷属の一つでしたが、のちに観音と同一視され変化神の1つとなりました。
この馬頭観音。私の担当するチベット文化圏では「タムディン」と呼ばれ、やはり観音菩薩というよりもその眷属である憤怒尊の馬頭明王として祭られていることが多いようです。

馬頭観音の御札とモンゴル文字の掛け軸(風の旅行社と書いてある)
セラ寺の馬頭観音については前回の水野の投稿でも登場した村上大輔さん(元風の旅行社ラサ駐在員。現・駿河台大学教授)の記事に詳しく書かれていますので、そちらもご覧ください。
10年ほど前にモンゴルを訪れた際には、モンゴル最大のお祭ナーダムに出場する馬の安全祈願を馬頭観音に捧げているお坊さんに出くわしたこともありました。実はモンゴルも敬虔なチベット仏教の国。遊牧生活にとって大切な馬などの家畜を守ってくれる馬頭観音はモンゴル人にぴったりの仏さまなのでしょう。
例大祭では、モンゴルの「ほしのいえ」に飾る御札と絵馬も購入しました。
風の旅行社ではモンゴル以外にも、キルギス、ネパール、ラダック、与那国島などでも多くの乗馬ツアーを企画しています。この夏、皆様の乗馬が安全でありますように。そして人馬とも無事であるようにお祈りをしてきました。もちろん神頼みだけではなくできる限りの安全対策を取りたいと思います。