農業と観光とITの国

2月14日から3泊でネパールへ行ってきた。2月なのに春を思わせるような陽気に、寒い日本を棚上げにして、“これも温暖化か?”とつい思ってしまった。車もかつては日本車ばかりが目立っていたが、今は、インド製や中国製、韓国製が多い。しかも、電気自動車がかなり入っていて、充電スタンドも充実してきているというから驚いてしまった。

一方、今でもカトマンズの信号機は殆ど動いていない。今回、動いている信号機を見たのは一か所だけで、相変わらず壊れた信号機の前で警察官が手信号をしている。その国に電気自動車とは、どこか妙である。だが、その電気自動車のせいだろうか。あの排気ガスの臭いが消えカトマンズの空気が綺麗になっていたのにはもっと驚いた。なんと素晴らしいことかと。日本が電気自動車を一向に普及させようとしない一方で、アジアも世界も急速に変わって来ている。

もう一つ驚いたことがある。以前は、カトマンズの道路の端には、菓子などを包装していたビニール袋などのごみが幾層にも堆積し、土と混ざって踏み固められていたが、今はかなり綺麗になっている。町の中を流れる川も、以前は、まるでゴミ捨て場のようだったが、すっかりごみが取り除かれている。
あとは、カトマンズの“名物”・蜘蛛の巣電線が消えたらかなり綺麗な街になる。現在、電柱の地下化を進めているようだが、そんな工事がおいそれと進むとは思えない。まずは、蜘蛛の巣電線を取り除くだけでも印象が大きく変わる。

ネパールは、ヒマラヤという唯一無二の素晴らしい観光資源がある。ヒンズー教徒とチベット仏教が交じり合いながら、お寺とともに人々は生きている。しかし、この国の貧富の差は激しく多くの人々は貧しい。観光客は、その貧しさの隣で高級ホテルにとまりヒマラヤを愛でてきた。そのネパールが、今、少しずつ変わりつつある。ネパールの伝統・文化・生活習慣を残しつつ街を綺麗にし、観光インフラを整えて居心地のいい観光を実現してほしい。観光客を今の約10倍の1千万人にすれば豊かな国になるはずだ。

以前、この稿で“出稼ぎ国家”と題して“マネー・リッチの国・ネパール“について書いた。その後も海外への出稼ぎは年々増えている。最近、最も増えている出稼ぎ先は日本である。今や、親戚の誰かが出稼ぎに出ていて、本国に暮らすネパール人は、その送金で豊かに暮らせるようになってきている。しかし、この豊かさは“貨幣価値の違い”が生み出したもので、決してネパールそのものが価値を再生産しているわけではない。国が本当に豊かになるとは、新しい価値を生み出すための再投資があってこそ可能になる。

しかし、日本のように重厚長大な産業を、今から生み出すことは難しい。また、世界のバランスを考えると、そんなことはもはや意味がない。先日、ネパールはIT国家へと変貌しようとしていると日本のマスコミでも報じられた。単なる先進国の下請けになることなく、北欧のように独自の技術を生み出し豊かな国になってほしい。農業と観光とIT。それがネパールの新しい国家像かもしれない。

今回は、カトマンズ郊外にも行った。村にはビニールハウスが増えている。ビニールハウスでいつでも野菜ができるようになり、季節感が薄れてきたそうだ。残念だが、味も確実に落ちているという。まさに、私が、小学生のころに社会科の教科書に載っていた「変わりゆく農業」そのものである。ネパールは確実に変わりつつある。
さあ、期待と不安が混在するが、ネパールは弊社の原点である。これからも目が離せない。

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