日々持ち歩くビジネス鞄に入れる、350mlくらいの小さな保温水筒が以前から欲しかった。買いに行こうと考えていたが、台所の流しの引き出しの中に丁度よいサイズのものがあったので、これはラッキーと思い使い始めた。何かの景品でもらったらしいが、いつどこで手に入れたかは定かでない。メーカーも不明で、中国語で書かれた小さなシールが貼ってあった。
氷を3つほど入れて麦茶を注ぎ鞄に入れた。電車の中で飲もうと取りだしたら、水筒が濡れている。その上、水筒が冷たい。まるで冬の車のフロントガラスに霜がついたように、黒い水筒の周りに白く霜がついている。入れてから30分ほどだったので、中の麦茶はまだ冷たかったが、会社に着くころには、中の氷も融け常温になってしまっていた。
いやはや驚いた。まったく保温性がない。形は普通のものと何ら遜色はないし、蓋もきちんと閉まる。漏れている様子はない。しかし、水筒の周りには霜がついて鞄の中の書類も濡れてしまった。もう嗤うしかない。ここまでくると品質が悪いとかではなく詐欺だ。
以前、西武新宿線の高田馬場の改札を出たビッグボックスの一階広場で、ベルトを買ったことがある。安い物はすぐダメになるという考えがよぎったが、最近は質もよくなっているし、多少物が悪くてもしばらくは使えるだろうと思い手に取った。なんと、3回しか使えなかった。表面の模様はシールが貼ってあるだけでボロボロに剥がれてしまった。油断したが、自分の判断で買ったのだから諦めるしかない。
最近、ユニクロなど安いのに十分使用に耐える商品が増えた。100円ショップのものだって3回しか使えないなどということはない。それに慣れてしまったせいで、安かろう悪かろうへの警戒感が緩んでいたようだ。親から“安物買いの銭失いはやめとけよ”とよく言われたものだが、何歳になっても、この教訓が生きていない。
先週、学生の卒論指導でブランディングの話をした。「ユニクロとはどんなブランドか?」「値段は安いが物がいい」「デザインはシンプルだがおしゃれ心あり」、色々聞いているとどの学生もユニクロには信頼感を持っている。過大な期待もないが裏切られない安心感があるという。なるほど、商品だけでなく、会社への信頼感の醸成がブランド化の条件だろう。
この間は、通りがかりの店で、私が買ったベルトと同じものが店先に並んでいるのを見つけた。その店は、バッグや鞄などを驚くほど安く売っていたが、きっとそれ専用の流通があるのだろう。どんな時代になってもこういう商売は消えない。やはり、嗤うしかない。