今週火曜日(1/12)の『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』(NHKBS1)では、「夢の海外旅行が実現した日」と題して海外旅行自由化が取り上げられた。私の大先輩もお二人登場すると事前に知ったのでテレビにかじりついて観た。
私たち旅行を生業としている者からすれば、言葉の壁と外国を全く知らない日本人の不安を、添乗員と現地とのネットワークを育て作り上げることで取り除き、値段を下げるためのあらゆる努力して、海外旅行を身近なものにしてきたのは、旅行業界の先人たちの努力のお陰だと自負している。
だから、番組もそういう視点からの期待感が大きかった。旅行会社の努力が取り上げられ、山田學・旅行産業経営塾前塾長の近畿日本ツーリスト時代の写真が映し出されたときは、さあ、オリンピックのチャーター便(欧州から選手を載せてきた便は空港に留め置けないので本来は空便で戻るが、これに日本人観光客を乗せた)の話や、ハワイのトリプル9チャーター便(機材を大きくして旅行代金を99,900円にした)の話などが聞けるものと期待したが、「大変で余裕はなかった」という15秒ほどのインタビューで終わってしまった。
番組の趣旨は「日本が海外旅行の自由化に踏み切ったのは、敗戦から19年後の1964年。その時、人々は海のかなたにどんな夢を見たのか?初の海外ツアーの参加客、初の海外ツアーを企画した仕掛け人、そして若き日の五木寛之が体験した人生を変える旅とは?自由な旅ができない今こそ考える、本当の旅の魅力とは?」(同番組HPより抜粋)だから、そもそも私の期待したものとは違ったから仕方がない。
今、私が一番危惧しているのは、この産業に携わる人材が、このままなら流出してしまうということである。雇用調整金の特例は、今回は延長されそうだが、もし縮小に向かえばたちまち海外旅行を専業とする旅行会社は行き詰り、廃業・休眠となれば人材が流出してしまうだろう。
風の旅行社が風の旅行社たる所以は、スタッフたちである。社名も事務所も海外とのネットワークもスタッフがいなくなれば何の意味もない。もちろん、柔軟に働き方を変えて今までとは違う形の雇用の仕方を考えるときが来るかもしれないが、これだけは確かだ。だから、こんな時こそ旅作りを支え日々携わる人々に焦点を当ててほしかった。あくまで身勝手な願いだが。