業務委託契約

フードデリバリー「Uber Eats」は、本年中に全都道府県へ配達範囲を拡げ売り上げを2倍にするという。現在は33都道府県をカバー。もちろん県庁所在地などの地方都市が対象ということのようだが違和感がある。コロナ禍で一挙にフードデリバリーやテイクアウトに火がついたが、コロナ収束後は、多少は残存需要があるにしても、売上は大きく減退するに違いない。なのに、何故、そんなに拡大するのか。

こんなことが成り立つのは、配達員とは雇用契約を結ばず業務委託契約でやっているからに違いない。需要がなくなっても「Uber Eats」自体は、配達員の人件費で赤字になることはない。自転車も配達員のものだし、配達カバンも「Uber Eats」から配達員が買う。だから殆ど設備投資も要らず経営リスクも極めて少ない。

米国ではドアダッシュというフードデリバリーアプリが50%のシェアーを占めているという。2021年スーパーボウルでも、約500万ドル(およそ5億3100万円)もの広告費用を投じたテレビCMが流れたというから驚きだ。赤字でもNo.1を取ることにスケールメリット以上の利益を生む構造があるのだろうか。解らない。

中国では、コロナ以前からフードデリバリーサービスが拡大していたが、コロナ禍で一層、急拡大しているようだ。一方で、厳しい配達期限と罰金が交通事故を招き社会問題化している。しかし、雇用関係はなく補償はない。まさにギグワーカーの悲劇が中国でも拡大している。

今、弊社も、雇用を守って海外旅行再開に向けた人材を確保し続けられるか否かという問題に直面している。ネパール、ブータン、モンゴル、モロッコなど、国からの援助は殆どなく、自力で何とかするしかない国から比べれば、日本は恵まれている。まさか、ここまで雇用調整助成金が出るとは思わなかったし、様々な援助金を頂いた。しかし、コロナ禍はまだまだ続く。何とか自力更生したいが中々ままならない。それでも、社員と話しながら出向なども含め道を探るしかない。

会社を経営し人を雇えば雇用責任が伴う。たとえコロナという経営者の責任範疇を大きく超えるような事態であっても、仕方がないと言って簡単に放棄するわけにはいかない。なのに、一方で雇用責任のない業務委託という働き方が広がっている。これでいいのか? これが新しい働き方か? 働き方改革ってなんだ? 私には、憤懣やるかたない違和感がある。

それに、一つずつ人が配って歩くなんて労力とエネルギーの無駄だし、味だって店で食べるのに比べたら遥かに劣るに違いない。出前の蕎麦をワーキングデスクで食べる。そんな昔に戻れとでもいうのだろうか。

上海で友人の行きつけのスナックに入ったら、何にする? といわれて渡されたのはフードデリバリーのメニューだった。便利といえばそれまでだが、ならば、最初から美味しい中華レストランに行けばいいと私は思う。

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